「林業ぜんぶやりたい。純粋な欲望」南河内林業/飯田晴花さん
<高校生による高校生のためのコラム「高校生よ、はたらいてもいいんだよ。」Vo.3>
こんにちは。岡本輝起(おかもとてるき)と申します。18歳です。高校生活をとおして、人生に悩みに悩みまくり、今も悩んでいます。
「特にやりたいこともない僕が、どうして大学に行こうとしてるのか」
「いい大学に行っていい会社に入って、その人生ってホントに楽しいのか」
学校という世界からは見えない、色んな生き方が身近にあるのではないか。魅力的な大人たちの仕事や暮らしに出会いたくて、Kiiのインターン(ライター見習い)になりました。
高校生による高校生のためのコラム「高校生よ、はたらいてもいいんだよ。」Vo.3です。
「林業ぜんぶやりたい。純粋な欲望」南河内林業/飯田晴花さん
(取材・撮影・編集:大越元/Kii編集長)
大阪府河内長野市に事務所を構える林業会社、「株式会社南河内林業」。2017年、こちらへ就職した女性がいると聞きました。メディア上では“林業女子”という言葉を聞く機会も増えましたが、実際にお会いしたく訪ねました。
(以下ライター:岡本輝起)
<林業大学校という選択肢>
飯田さんが林業の道に入ったきっかけは何ですか。
高校に入ったばかりの頃は漠然と「山で仕事するのとか面白そうやなー」と思っていたんです。でも、基本インドアなんですよ(笑)。ほんとに体育会系とかやってこなかったし、自然が大好きなわけでもない。一度、テレビで林業の様子を見た記憶があるぐらい。
高3になって林業への就職も考えていた時のことです。「大学で勉強しても、役に立つことないやろう」って思ったんですね。それにわたしは文系だったので、大学受験に向けて理系の勉強をし直す時間も情熱もなかった。そんな中、長野県林業大学校を知ったんです。2年制で、実技を含めて林業が学べるんですね。
林業大学校に行きたいと言うと、周りの人はどういう反応をしたんですか。
同級生や学校の先生は、「おお?」って感じでしたね。進学校に通っていたので、4年制大学に進学する人がほとんどやったんです。両親も心配はしたんですけど、行かせてくれました。
まず林業大学校に入って、よかったなと思うことはありますか?
2、3本とはいえ実際に木も伐りました。その上で、4年生の三重大学で専門的に学ぶことができて、その順番が良かったです。
余談ですけど、三重大学には社会人で入学してはる方もいたんですよ。なんというんでしょうね。同じ授業を受けてても、その人は学ぶ姿勢が全然違って見えたんです。多少でも現場を見た上で、大学へ通う。そのほうが、学ぶ値打ちはあるのかなと思いましたね。
<林業大学校を経て、大学へ>
飯田さんは、どうして大学へ編入を?
林業大学校で勉強して、林業の現状を多少は聞けたんです。
「皆伐の後、本来行うべき再造林がなされないハゲ山が増えている。手入れがされなくなった山では、大雨が降ると土砂が流出しやすい。どうして再造林がされないのか?木も全然売れへんし、採算が合わん。林業をやりたい若手が入ってきても『見て覚えろ』っていう世界だから、辞めていく人も多いらしい」。
そこで、林業に対する「面白そう」の質が、変わったんです。ぼんやりと「山で仕事をしたい」から、「山をもっと知りたい」へ。それで大学へ進みます。編入可能で、家から通えるのが、三重大学だったんです。
大学では何を勉強しましたか?
砂防の研究室にいました。
さぼう?
「林床の状態が土壌の流出に与える影響」を 研究していました。
ちょっと気を抜いていたら、就職するタイミングを逃してしまって!大学院でもう2年間、研究を続けました。2017年の3月に卒業して、4月からここで作業しています。
<林業の現場へ>
林業の研究を経て、林業の現場ではたらこうと思ったのはなぜですか?
色々と勉強をした上で、森の計画を立てられる人になりたいと思ったんです。
森の計画?
「良い状態じゃない」って言われている山の環境を良くしつつ、山主さんにもお金を返していく計画です。そのためには、「とにかく林業に一旦就こう」って。やっぱり山の現場で仕事できやんと!計画なんて立てられないなって思ったんです。
仕事を探しはじめたのが、大学院2回生のときでした。「林業するなら地元がいい」。そう思っていた時、人づてに「大阪で林業やりたいんやったら南河内林業」と聞いたんです。さっそく電話をかけて、在学中に何度かアルバイトさしてもらって。2017年の4月から半年間の研修を経て、10月から正式に採用していただきました。だからまだ、始まったばかりです。
<林業ぜんぶやりたい>
林業にまつわるネガティブな話もたくさん聞きましたよね。「大変だからやめとこう」とはならなかったの?
ならなかったですね。
飯田さんの芯には、何があるんでしょうね。
…純粋な欲望、かもしれないですね。林業のお仕事は、現場がすべてではありません。山を自然として管理し、資産として運用する計画をつくる仕事もあります。木を売って、使ってもらう仕事もあります。
それらをぜんぶ含めて、「林業」がやりたい。
そういう欲望です。
自分の「やりたい」がまずあるんですね。「やった」と思える瞬間を、どうイメージしていますか。
自分が仕事した山を見て「ああ、よくなったな」と思えるところまで行きたいですね。
飯田さんがそう思えたときに、日本の林業に何が起こるのか。ワクワクします。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!
<「高校生よ、はたらいてもいいんだよ。」を一緒に書いてみませんか>
記者への登録、問い合わせ、記事への感想などはこちらメールをお送りください。
【飯田晴花さんプロフィール】
1992年 大阪府出身
2013年 長野県林業大学校卒業
2015年 三重大学 生物資源学部卒業
2017年3月 三重大学大学院 生物資源学研究科卒業
2017年4月 株式会社 南河内林業勤務