仕事のぐるりVo.1 sonihouse「ピアニスト、エンジニア…音楽に生きる人たち」
<仕事のぐるり>
こんにちは。Kii編集長の大越元です。
いきなりですが、みなさんはどんなことを大切にして、働いていきますか?
給与や福利厚生は欠かせないけれど、「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、仕事を通して出会う人も大切だと思います。それを、仕事のぐるりと読んでみます。
Kiiで紹介してきた仕事のぐるりを、少しずつ追いかけてみたいと思います。
第1回は、奈良県奈良市のsonihouseさんです。2018年1月18日に、大阪北区の天満教会で行われたレゾナンス・ミュージック主催のカルロス・
<音楽に生きる人たち>
カルロス・
音楽は自分を知るための道具だった。選ぶことも、決意もなく道を歩みはじめた。音楽以外からたくさんのことを学んできた。庭いじりを通して、自然を守ろうとする人々について考えるようになった。その経験が、音楽の意味を塗り替えていく。
彼の音を、どうしたら観客に届けられるのか。
1/18、大阪・天満教会。
そこには調律師、レコーディングエンジニア、プランナーそして、PA。一度きりのコンサートを形にするべく、音楽をなりわう人たちが集った。
この日は、PAを務めるsonihouseの鶴林万平さんのアシスタントとして、一日同行した。
正午の鐘が鳴るころ、天満教会では、コンサートの準備が始まった。
この日、万平さんが用意したのは、6つのスピーカー。
高さを162センチに統一して、ジャックにさしたケーブルを這わす。
会場では、19時の開演に向けて、おのおのが手を動かしている。
録音を手がけるのは、レコーディングエンジニアのKC(岩谷啓士郎)さん。トクマルシューゴ、LOSTAGE、Nabowa、ACOなどの音源を録音している。バンドメンバーとして、ライブに加わることも。
高校時代にギターを弾きはじめた。19歳の時にリリースされたくるりの「図鑑」で、ジム・オルークがプロデュースから録音まで手がけたことにインスパイアされた。エンジニアとプレイヤーを兼ねるスタイルを築いている。
会場にミツバツツジを活けたのは、庭師の上田学さん。自身が六甲山に所有する森。2017年の台風で折れた枝を水揚げしたもの。春になると、ふたたび花を咲かせるという。
またある人は受付の設営、遮光のための窓にテープを貼り、控え室のセッティングをする。
教会が、一晩限りのコンサート会場へと変わっていく。
「自分が演奏するわけじゃないのに、
そう話す万平さんが、一番緊張していたのかも。実は、2015年に予定されていたカルロス・アギーレの来日。万平さんはPAを務める予定だったが、急遽コンサートが中止となった。
PAは、何を基準に音を合わせていくんだろう?
「PAの仕事って、絵の構図と一緒やと思うんです。PAはそれぞれに構図感覚を持っていて。何度も音を聞きながら、不自然なところを直していく。『ここの輪郭、ちょっと太い。力入りすぎ』みたいな(笑)。僕は基本的に、あのピアノから、あのギターから出る音を、自然に出そうっていう。ただ、僕の思う“自然”が、アギーレさんと合うのかどうか」
「1週間前から緊張してます。直前は、『なんでこの仕事してんのやろ』って。それぐらいに」
くわえて音響は、些細な条件によって変わるそうだ。今回の会場は、教会であること。また、会場に観客が座ると、音はさらに変わる。人が音を吸うからだ。
16時。カルロス・アギーレが到着した。黄色いベレー帽に、
万平さんは、会場内とPAブースを行き来して、音を調整していく。
1時間後、「Natural Sound!」という言葉が飛ぶ。カルロス・アギーレは開場15分前まで、演奏を重ねた。
18時。お客さんが中へと入っていく。仕事を早く終えたのだろうか。待ちわびた表情がならぶ。
ここで「外へ出ましょうか」。万平さんとKCさんは、天神橋1丁目の表参道をぶらつく。
「ゲーセン行ってないね」「白菜高いな」「
19時、カルロス・
今年、52歳。ピアノを始めた時の衝撃は今も忘れられない。そして生き続けること。
会場内に少しずつ揺れる体、穏やかな表情、そして熱を帯びていく拍手。目を瞑る人も、ほおに笑みを浮かべる人も、メトロノームのように頭を揺らす人も。
アンコールで演奏した即興の、ほんの数分。気づくと自分も目を瞑り、頭を揺らしている。
なぜか秋、たわわに実った小麦畑を思い出した。
目を開けるとたった一人の音楽家と、たくさんの背中を前に、万平さんは立っていた。
<仕事のぐるりを訪ねませんか>
2/24にsonihouseで行われるLee Nobleさんのライブに行きます。よかったらご一緒しませんか。
sonihouseのスピーカーで音楽を聞いてから、僕は聞く音楽の幅が広がったように思います。Youtubeでオススメの音楽を流し聞きしていたのとは、全く違う聞き方があることに気づいて。「自分にこんな豊かな気持ちがあったんだ」とうれしくなったのを覚えている。僕自身が音楽にさして興味のなかった人だからこそ、SpotifyやYouTubeを流し聞きしている人にこそ、一度聞いてみてほしい。
遠方の方でしたら、Kii house Naraに泊まってってくださいねー。