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南伊勢町地域おこし協力隊 大北麻奈さん

 

まっさらな海と空、ヤシの木の葉が波風でゆったり揺らいでいます。ここは海外にある南国のリゾート地・・・ではありません。三重県度会郡南伊勢町の田曽白浜(たそしらはま)です。有名な伊勢神宮からは車で約50分、愛知県名古屋市からは約2時間のところにあります。

そして、ここは田曽白浜リゾートにある施設のひとつ「ステーキカフェ Wood Fire Meat Beer」の厨房。そこには何やら美味しそうな料理を作っている女性の姿がありました。

彼女は大北麻奈さん(24歳)。令和2年5月1日に「南伊勢町総合リゾートサービス事業」に取り組む 地域おこし協力隊となりました。出身は愛知県の北西部のあま市。現在は五ヶ所湾に囲まれた南伊勢町の木谷地区に移住し、約1ヶ月が経ったところです。

そんな彼女は今、地域おこし協力隊としてどんな仕事をして、南伊勢町でどのような暮らしをしているのでしょうか?

彼女に話を聞いてみると、まだ慣れない南伊勢町での暮らしに寂しさや不安を感じながらも、新たな発見を楽しむ前向きな姿がみえてきました。

彼女のお仕事

ステーキカフェ Wood Fire Meat Beer店内にて

田曽白浜リゾートは、南伊勢町東部の田曽浦にあります。南伊勢町は伊勢志摩国立公園にも登録されている自然豊かな町で、現在約12,000人が暮らしている地域です。少子高齢化をはじめ様々な課題を抱える中、町の魅力を最大限に活かした新たな観光産業を確立していくことを目指しています。

その取り組みのひとつが「田曽白浜リゾート」の開発です。

田曽白浜リゾートでは大自然の中で楽しめるアクティビティが充実し、ゲストハウスや民宿といった宿泊、新鮮な海と山の食を堪能できる三重県有数のスポットです。2019年1月に伊勢志摩観光開発株式会社が手掛けて約1年半で、施設やサービスも充実し、町からの期待も高まり続けています。

そこで南伊勢町では伊勢志摩観光開発と連携して、「風光明媚な伊勢志摩国立公園をフィールドに町の魅力を最大限に活かした新たな観光産業に取り組む。」をミッションとした地域おこし協力隊員の募集をしました。

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等に移住し、一定期間、地域に居住して、地域ブラ ンドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。

その募集に手を挙げたのが、大北さんでした。

お気に入りの小さなヤシの木。

 

彼女に南伊勢町にはじめて訪れたきっかけを聞いてみました。

大北さん「地縁者が南伊勢町ですでに移り住んでいて、こっちに来ない?って誘ってくれたんです。」

そんな誘いの一言から、はじめて訪れることになった南伊勢町。当時をこう振り返ります。

大北さん「どこを走っていたかはわからないんですけど、海岸線沿いに生えているヤシの木にまず驚いて、そうしたら・・・・うみーってもっと驚きました。」

眼前に広がる海を一望した時、彼女の背中は強く押されて、南伊勢町にまず移住することを決意しました。昔から海外旅行好きで特に海は大好き。人生で一度は観光地で働きたいという考えも持っていたところ、田曽白浜リゾートでの地域おこし協力隊員募集にめぐりあいました。

彼女が数ヶ月前まで住んでいた愛知県あま市は、住宅街が立ち並ぶ名古屋市のベットタウン。地域おこし協力隊になる前までは名古屋市で事務仕事をしていました。今の仕事は、「ステーキカフェ Wood Fire Meat Beer」の運営業務です。週5日、9時∼17時勤務で調理や接客を幅広くこなしています。

大北さん「接客はもともとアルバイトの経験がありました。人とお話するのは好きです。」

接客に対して調理ははじめての経験。看板料理のステーキの注文が入ると、ちょっと緊張してしまうそうです。そんな姿を見てか「ゆっくりでいいからね。」とお客様が気遣ってくれることも。

ちなみに、ステーキ以外でオススメなのはタコス。南伊勢町でステーキやタコスを食べられるお店はとても珍しい。

彼女の暮らし

大北さん「元々実家暮らしで、一人暮らしをしたことなかったです。本当に全てがはじめてだらけで。」

南伊勢町で暮らしはじめて1ヶ月の間は、まず生活に慣れること。南伊勢町暮らしでは生活や通勤に車の運転が不可欠です。ペーパードライバーだった車の運転もこの1ヶ月で慣れてきました。食べることも元々好きで、調理道具一式を揃えて自宅料理にも挑戦しています。

南伊勢町は全国でも水揚げ量は5番目に多い町です。彼女に好きな魚を聞いてみました。

大北さん「ゴマサバや鯛が好きです。それでこの間知ったんですけど・・・ゴマサバって魚の種類なんですね。」

なんでも、ゴマサバはサバにゴマを和えてある料理だとずっと思っていたそうです。南伊勢町でゴマサバの名前で魚が販売されていて驚いた、というクスっとしてしまう笑い話。南伊勢町に暮らす人には当たり前のことも、彼女にとっては日々の生活に小さな発見が溢れています。

南伊勢町での暮らしは規則正しい生活で、時間にゆとりを感じていると話します。先日は職場の同僚にレザークラフトを教わり、自宅時間を楽しむための工夫にも積極的に取り組んでいます。 もう少し生活に慣れてきたら近場の伊勢志摩散策に出かけたり、マリンアクティビティや魚を捌きにも挑戦する予定です。

何でも楽しみたいと色んなことに積極的な彼女。しかし、生活の環境変化には不安や悩みも多いと言います。

大北さん「スーパーやコンビニが近くにないことに驚きました。」

移住前の住まいでは、自転車で5分のところにスーパーやコンビニがあり、何か足りないものがあった際にはすぐに気軽に買い物に出かけました。しかし、南伊勢町暮らしは自宅からスーパーまで車で約20分程度。17時に退社したとしても、車で往復約40分かけて買い物に出かけることには慣れず、現在は休日に1週間分の食材を買い溜めして生活しています。

大北さん「一人の時間も不安を感じます。やっぱり家族や友人に会えないのは寂しいです。」

車を運転できるようになったとはいえ、愛知県の実家までは高速道路を使って約2時間。お金もかかるため気軽には帰れません。また、南伊勢町には電車は走っておらず、家族や友人にこちらに遊びにきてもらおうにもハードルがあります。

そう話すと少し寂しげな表情を見せながらも、すぐに笑顔に戻るのは彼女の魅力です。「なんでも楽しんでいきたい。」と話す彼女の前向きな姿勢は会った時から話を聞き終えたあとも変わりません。

これから数ヶ月後の彼女の生活はどのように変化していくのでしょう。彼女の南伊勢町での地域おこし協力隊活動と暮らしは、はじまったばかりです。

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