もはや島じゅう家族。子育ての島で、保育士募集(後編)答志保育所/三重県鳥羽市

Toba chairs(トバ チェアズ)は、三重県鳥羽市が企画する仕事紹介プロジェクトです。紹介するのは、鳥羽市在住の2人のクリエイター。今後、6つの仕事を紹介していく予定です。第二弾として、「答志島保育所の保育士さん」を紹介します。

(文 鼻谷年雄/ロゴデザイン 勝山浩二/写真と編集 Kii)

保育所を出ると、手をつなぎあい2列になって歩く子どもたち。丘の上から海のほうへと歩いていく。途中、住宅が密集する路地へと入った。

すると、子どもたちが突然歌を歌い始めた。

うまれてわたしは2年目のちいさなちいさなアワビです♪すんに足らないわたしらはまだまだおいしくありません♪もうあと1年みのがして♪これこのとおりおがみます♪

都会では考えられないと感心していたら、こんな光景が現れた。

子どもたちの歌声を聞いて、ほうぼうの家の住人が玄関から出てきたのだ。

それも、行く先々で。

地域の子どもと大人が、すれ違い様にこんなにも近くで触れ合う。その光景は、答志島で初めて見たものだった。

そうか、これが「島中みんな家族」か。

実は、「島中みんな家族」には文化的な背景がある。ここ答志島は、古くから漁業の島として栄えてきた。そして答志地区には「寝屋子ねやこ」という独特の制度がある。中学を卒業した男子は、親元を離れて共同生活を行うのだ。

港町ならではの仕事道具である漁網、タコツボ。フォークリフトで荷物を運ぶ男たち。白波を引いて走っていく漁船。子供達の声に驚き、一斉に飛び立つ海鳥。歩く先々に学びのタネが転がっている。

子どもたちを楽しませるには、まず先生が楽しむこと!

歩くこと15分。ゴールの白浜へ到着すると、真っ先に駆け出したのは主任先生だった。

ゴツゴツとした磯場へ。満潮の磯には水たまりができていて、すぐに生き物探しが始まった。

「見て見てー、カニとったで」「こっちはヤドカリー!」「これ、なになに?」子供たちは次々と、磯の生きものを捕まえていく。けれども、貝の一種であるカメノテだけは、岩に強く張りついてはがれない。

そこへ主任先生。平たい石を拾い上げると、海女さんの道具である「磯ノミ」のように、きれいにカメノテをはがしてみせた。

主任先生は、鳥羽市相差おうさつ町在住。毎日定期船で通勤をしている。鳥羽市内とはいえ、答志島の自然環境は主任先生にとっても新鮮なものだった。

主任先生は、所長先生がよく口にする言葉を教えてくれた。

「子どもたちを楽しませるには、まず先生が楽しむこと!」

島の保育所で働くことは、島の自然を楽しむことだった。

保護者たちに聞いた、保育士のこと

では、島外出身者にとって、島暮らしってどうなんだろう?

午後4時ごろ、続々と保護者のお迎えが来たので、話を聞いてみる。

大阪から島に嫁ぎ、養殖業とパートをしているお母さんに話を聞いてみた。

―答志島での子育てはどうですか?

「しやすいですよ。都会のように待機児童の問題はないし、島なら安心して子どもを外で遊ばせられます」

―都会とは、人づきあいのギャップが大きいんじゃないですか?

「そうそう!若い人はまだしも、おじいちゃんおばあちゃんにとって、外の人はめずらしいでしょ。最初は『あんた、どこから来たのー』。島に来たばかりのときは、外を歩くと毎日、聞かれたね(笑)」

―人づきあいのコツとか?

あいさつができたら大丈夫よ」

もう一人、三重県松阪市から島の寿司屋に嫁いだというお母さんにもうかがった。

―保育所の印象はどうですか?

「一人一人に面倒が手厚い。放っておかれている子がいないです」

―答志島の保育士を考える人にアドバイスください!

「まずは島に遊びに来て、雰囲気を知るのがいいですよ。わたしも初めは、島暮らしに全くイメージが持てなくて。寿司屋を手伝いながら、地元のお客さんになじんでいけたんです」

最後の子を見送りし、時計は16:30を指していた。

さいごに

島外に住んで通勤する先生たちは、定時の17:15まで仕事をして、17:40に和具港発の定期船で帰るという。僕も同じ便で帰ることに。帰りの便を待ちながら、あらためて、島の保育士という仕事について考えてみた。

・園内での仕事は、都会とも大きく変わらない

園内で子どもを遊ばせ、給食を用意し、掃除洗濯をする。そうした仕事は、都会とも大きく変わらないようだった。仕事の内容が特殊だったり、周りからのプレッシャーが特別に重いということもない。

・園を出ると、「島じゅう保育所」だった

白浜へと向かう散歩。その道中で、島の人のつながりの深さや、子どもたちが温かく見守られていることが、よくわかった。

・自然好きには、この上ない環境

本編では紹介できなかったけれど、白浜への行き帰りに「くずの花」を見つけて遊んだり、漁師さんから漁業の話を聞く場面もあった。まずは、先生自身が所長先生や島民から学んでいくのでは。

・島中、みんな家族

産休に入るマコ先生は、保護者への感謝を口にしていた。それに、保護者たちが先生へ色紙をプレゼントするなんて、すごいことじゃないか?そう。島中、みんな家族なのだ。保育士だって、この島の家族たちに見守られているのだ。

・一度、答志島を訪ねてみませんか?

答志島の保育士は、人間関係においては安心と言えそうだ。ただ、買い物だとか通勤だとか、興味のある人は一度、足を運んでみてほしい。保育所から帰るお母さんたちのおしゃべりの輪に、気軽に声を掛けてみても、ね。

<募集要項>

募集職種 保育士(臨時職員)
給与 日額7,800円 別途通勤手当、賞与、時間外手当等を支給
仕事内容 答志保育所において未就学児童の保育を行う
勤務地 答志保育所
勤務時間 8:30-17:15(休憩時間 12:00-12:45) 原則月20日勤務
(週5日程度、土日祝日勤務となる場合あり)
採用人数 1名
応募の流れ まずは下記よりメールをどうぞ!

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