三重に友だちつくろう!答志島女子会開催レポート

「答志島に、頼れる同世代の友達を作ってほしいな。子どもの離島留学ってどうなの?観光で訪れてみたいけど、どこの浜の景色がきれい?おいしい海の幸は?どんな人たちが暮らしているの?と、いつでも聞けるような」

そう話すのは、答志島に暮らす五十嵐ちひろさん。2020年3月までは地域おこし協力隊として活動。任期満了後も、外国人向けの観光業を始めるべく、準備中です。

五十嵐ちひろ
埼玉県出身・和具地区在住。地域おこし協力隊として答志島へ。答志島の日常を綴るブログ「SU ISOLA」

島女子会

答志島に暮らす女性からなる「島女子会」は、2019年度に2つの企画を実施しました。大阪出身の島女子2人をゲストに招く「島女子会in大阪」。そして、現地を訪ねる「島女子会in答志島」。今回は答志島の写真を織り交ぜつつ、島女子会in大阪のトーク内容をご紹介します。


会場の隣はキッズスペース。島女子ママの子どもと参加者ママの子ども8人が一緒に遊んでいました。

2019年9月8日に鳥羽市主催で開かれた「島女子会in大阪」。答志島に暮らす3人の女子が、「グルメ」や「子育て」などテーマごとに話し、10人の女子参加者からの質問に答えます。

テーマトーク開始

いがちゃん
五十嵐ちひろです。気軽に「いがちゃん」と呼んでくださいね。

さちえさん
川原沙知恵です。大阪府出身で、結婚を機に移住しました。上に8歳、下に4歳の子がいます。わたしは、ツアー会社「島の旅社」のガイドも務めています。よろしくお願いします。

まりこさん
濱口万里子です。大阪府で生まれて育ったんですけど、お父さんとお母さんが答志島の出身。小学校4年と3年の子どもがいます。

いがちゃん
まず、答志島を知っている人はいますか? 三重県鳥羽市に4つある離島の1つで、伊勢湾内で一番大きな離島です。近鉄電車で大阪難波駅から鳥羽駅までは2時間くらい。鳥羽駅から市営定期船が発着する鳥羽マリンターミナルまでは歩いて10分。答志島には桃取、答志、和具の3集落があり、1日10本、定期船が出ています。桃取までは12分、答志・和具には20分。集落ごとに文化や言葉が違うんですよ。

人口は2019年7月末時点で1999人。主な産業は漁業、養殖業、観光業、農業。住民の半分が漁師で、港には漁船がずらっと並んでいます。道の脇に漁具が当たり前に置いてあります。海が近いので、なんといってもおいしい食べ物が山ほどあります!

では、テーマトークに入りましょう。テーマは子育て、仕事、病院、祭り、海女、グルメ、人付き合い、ファッション、娯楽という9個を用意しました。会場の方から、どのテーマについて話してほしいか選んでもらいます。聞きたいテーマは?

娯楽

会場
娯楽について聞かせてください。

さちえさん
お酒を飲むか歌を歌う。大阪みたいになんでもあるわけじゃないですね。

いがちゃん
休みは島の外に出ることが多いですね。苦になるほど時間がかからないので。

さちえさん
お金を貯めて、近所の厄年仲間で旅行に行く習慣がありますね。

いがちゃん
家族も連れて行きます。毎月こつこつ、100万円くらい貯めてハワイに行ったり。答志地区には「寝屋子(ねやこ)」といって、中学を卒業した男の子たちが、実の親ではない「寝屋親(ねやおや)」の家に毎晩、集まって泊まる風習が残っています。10年くらいで解散しますが、同じ寝屋子仲間は「朋輩(ほうばい)」といって一生、関係が続く。その仲間での旅行もすごく楽しみみたいです。

会場
ふうん。

さちえさん
島で魚釣りや磯遊びはします。

いがちゃん
女性でもいますね、魚釣りする人。

子育て

まりこさん
育てやすいです。島ではみんなどの家の子かわかってるから、近所で「うちの子知らない?」と聞いたら、「さっきどこそこにいたよ」と教えてもらえます。

さちえさん
だから、放し飼いにしてます(笑)。

いがちゃん
危険はないんですか?

まりこさん
小学校に上がるまでには危ないことは教えてあります。海の際には近づかないとか。

さちえさん
変な人や危ない人も、船に乗らないと来られないしね。自然も魅力かな。虫なんて捕り放題。

まりこさん
夜な夜なカブトムシを捕まえ行ったり。

いがちゃん
さちえさんの家は、ベランダにホタルが飛んでる。

さちえさん
電気かな? って思ったら、ホタルでした。家が水辺なので。

いがちゃん
そんな環境ですから、「ここで子育てがしたいから嫁いだ」という声を聞いたことがありますよ。

グルメ

まりこさん
とりあえずなんでもおいしい。ほんまにおいしいです。さちえさんの家はノリの養殖をやってて、うちはワカメをやってます。

いがちゃん
答志島産のノリを食べたとき、生まれて初めてノリの味を感じたんですよ。何か秘訣があるんですか?

さちえ
主役を張れるノリですね。ノリを採ってから冷凍することで、アミノ酸がぐっと増すんです。これは鳥羽だけの手法。九州のようなブランドには育っていないけれど、私は答志のノリが一番おいしいと思う。

いがちゃん
私は昔から穴子が大好きなんですが、当たりはずれのあるものなんです。でも、答志でははずれの穴子なんて1本もない。商店があって、そこの穴子が最高! 店のご主人が元は板前さんで、さっきまで生きていた新鮮そのものの焼き穴子が山盛りで680円。白いごはんにのせるだけで、もうおいしすぎる!

さちえ
エビとかカニもドサッと買えます。

いがちゃん
大きいパックに身の厚い茹でたやつが500円とか。食べきれない(笑)。そうした商店に加えて、飲食店もけっこうあるんですよ。郷土料理が食べられる食堂に、お寿司屋さんも2軒と、居酒屋もちらほら。意外と外食できます。

さちえさん
お好み焼き屋さんが2軒もあるんですよね。名物はメカブ入りのお好み焼き。

会場
ええっ、メカブが!?

いがちゃん
ただ、スイーツを食べられる店がほとんどないですね。

さちえさん
喫茶店でかき氷やパフェくらいかな。


休憩時間には島女子手製の「ところてん」をみんなでいただきました

会場
ほかに食べたいときは?

さちえさん
誰かに作ってもらう。

いがちゃん
まりこさんがケーキ作るのを楽しみにしています(笑)。桃取地区にはパン屋さんがあって、注文があると誕生日ケーキも作ってくれるみたいですよ。

海女

いがちゃん
次は海女さんのこと。私はやっていないので2人からどうぞ。

まりこさん
足が立つような浅瀬で、家族が食べる分を獲るくらいの「なんちゃって海女」です。漁に出るときは、体重10キロに対して1キロの重りを腰に巻くんですが、重くしすぎると上がって来れなくなるんじゃないか、と。怖いから軽めにしています。

さちえさん
うちは嫁いでも全然、海女に連れて行ってもらえませんでした。潜った後は家事ができなくなるくらいしんどいからと。だから1人で貝を拾いに行ってたら、「本気なんやな」って認めてもらえて、移住9年目にして初めて誘われました。年に1回だけ潜れる神聖な島があるんですが、ふだんは勤めをしている人も漁業権を持っていたらみんなその日は行くんです。そこはけっこう穫れるというので、前の日は眠れないくらい興奮してしまって。

いがちゃん
アワビ、サザエ、ウニ、フクダメ(トコブシ)とあるけど、一番高いのがアワビです。アワビを10個穫ればいいお小遣いになるっていいますね。

まりこさん
1キロで1万円超えてくる。

さちえさん
お金が落ちてるという感覚。

いがちゃん
漁に出ていないときでも、海が澄んで下にアワビが見えると、お金に見えるらしいんですよ。

会場
ふふふ(笑)。

さちえさん
だから海女さんって、80歳超えても続けたい楽しい職業みたいです。

いがちゃん
昔からの海女さんは、陸で背中が曲がってても、海に入るとまっすぐになるそうです。獲るのが楽しいし、お金になるからなお楽しい。私は怖くて見てるだけですけど(笑)。

さちえさん
どこまで潜るかは、その人の腕次第。

まりこさん
漁期は地域によって変わります。和具地区では大潮の日の干潮に合わせて操業するとか、集落ごとのルールがあるんです。

いがちゃん
資源管理のためで、取り尽くして次の年に一匹もいなくなったらいけないので。

さちえさん
とるサイズも決まっていて、一定の大きさ以下のものは放流します。小さいものでも、一度に200匹の卵を産むんです。答志の子どもは、小さいときからアワビの歌を歌うんだよね。


「うまれてわたしは2年目のちいさなちいさなアワビです♪寸すんに足らないわたしらはまだまだおいしくありません♪もうあと1年みのがして♪これこのとおりおがみます♪」

いがちゃん
「資源管理をしましょう」という歌詞なんです。

仕事

会場
漁業のことは聞きますが、農業ってあるんですか?

いがちゃん
農業は主に桃取地区で、農協の店舗もあります。ほとんどが自給のためですね。

さちえさん
家々に畑があって、おばあさんがやってます。だから野菜をあまり買わなくてすみます。

まりこさん
きゅうりはほとんど買わないよね。昔は、卵を手に入れるために、鶏を飼っていたそう。

いがちゃん
昔はほんとに離れ小島だったので、自給自足の生活が身についているんです。畑はおばあさんたちの居場所なんですよね。

さちえさん
大阪と違って4世代で暮らしている家も珍しくないんです。大おばあさんがいて、真ん中のおばあさんがいて、私らがいて、子どもがいる感じ。

いがちゃん
そういえば、答志の人たちってお墓を毎朝、掃除するんですよ。だからお墓がすごくきれいで、夜に通っても全然、怖い感じがない。いつも人がいるのを見てるし、すごくきれいにしていますから。

病院

会場
島に病院はあるんですか?

いがちゃん
島には診療所と開業医の内科さん、歯医者さんがありますが、夜は無医村状態(※2)。産婦人科は本土側の市内にもありません。鳥羽市自体が人口18,500人の小さな街で、買い物も病院もとなりの伊勢市に行くことが多いですね。正直、医療は島で暮らすいちばんのデメリットかもしれません。私は病院に行く機会が少ないですけど、子どもがいる方、持病を持っている方だと不安要素になりますよね。

さちえさん
そのぶん誰かが倒れたら助ける意識は高いです。AEDの講習を受けたり、緊急時にパッと処置できたり。移住にあたって病院が一番ネックでした。とくに悪いところもなかったんですけど、階段から落ちたときに「うわー!」って焦りました。でも、近所の人らがすぐにタンカを持ってきてくれたんです。

まりこさん
行動が本当に早い。

さちえさん
「頭動かしたらあかん!」「固定しろ!」と、みんなが救急隊員になって運んでくれました。緊急で船を出してもらい、鳥羽のフェリーターミナルから救急車へ乗り込みました。

まりこさん
ドクターヘリもあるね。

さちえさん
ドクターヘリが着くときは、放送がかかります。「ドクターヘリが到着するので、消防隊員は小学校の校庭へ集まってください」って。ヘリが止まれるように、校庭の土に水をまくんです。

いがちゃん
へえ! それは知らなかった。

※2 鳥羽市によると、桃取地区の市立桃取診療所には医師1名と看護師2名が勤務。答志地区の開業医は2019年度までで閉院予定。診療所の医師は島外からの通勤。

人付き合い

いがちゃん
次が最後のテーマになりそう。残る「祭り」「人付き合い」「ファッション」の中で選ぶと?

会場
人付き合い。

まりこさん
移住して最初は難しいと思います。みんな距離感が近すぎるので。

さちえさん
そう、近い(笑)。嫁に来たら、まず「どこの嫁や?」って聞かれるんですよ。それも1人じゃなくて、会う人会う人に。それで次に会ったら「どこ行くんや?」って聞かれる(笑)。

いがちゃん
「どこ行くんや?」は、あいさつなんですよね。答えが聞きたいわけじゃないんですよ。あいさつなんです。話しかけるだけ。

まりこさん
最初は「答えないといけない」と思ってたから、すごいストレスだった。でも実際は、「ちょっと」とか「どこでもええやん」ですむ。

いがちゃん
男性はシャイな人も多いです。とくに漁師さんは、お酒飲むとすごく陽気になるんですけど、しらふのときはあまり目を合わせてくれなかったり。

さちえさん
前の夜に「タコあげるから来い」と言われて次の日に行ったら、タコが空飛んできて、「いやいやいや、ちゃんと渡してよ!」(笑)。

いがちゃん
それくらいシャイな人が多いんです。

いがちゃん
人付き合いでありがたいのがゴミ捨て。ゴミ捨て場は答志地区で2ヵ所、和具地区では1ヵ所だけだから、家から少し遠いんですね。それで、私がゴミを持って歩いていると、後ろから来るバイクや車の人が「乗せていけ」と声をかけてくれます。預けると一緒に捨ててくれる「ゴミ捨て代行システム」があるんです。

会場
へーえ。

いがちゃん
最初は申し訳ないと思ったんですけど、お互いに頼るのが当たり前。だから、おばあさんが運んでいるのを見たときには、私が代わりに持って行きます。自分も迷惑をかけるけど、相手も頼ってくる、そういう関係はすごくいいなと思います。ゴミ捨てはコミュニケーションを生んでいて、その日は必ず1つか2つ井戸端会議が始まります。

さちえさん
私は、答志島は1つの会社みたいだと思っています。だから嫁に来たときは、会社に来たと思って必ずあいさつをしました。

まりこさん
私も、知らない人にも全員にあいさつします。すると、「いい嫁や」とそこらじゅうで話してくれますし(笑)。

さちえさん
島であいさつは大事です。距離感が近いと、都会だったら「この人大丈夫かな?」って顔をされてしまいますけど、答志島では素でいられる。あまり自分を演じなくていい。みんな干渉するんですけど、そういう意味では干渉しないんですよね。

テーマトークはこれにて終了。島女子たちがつくったスイーツでの休憩タイムをはさみ、グループトークへ。

後半戦も、島女子のおしゃべりは絶好調。席と席の距離が縮まり、参加者たちもすっかり打ち解けていました。

島女子会in答志島

10月26、27日は答志島で1泊2日の島女子会in答志島が実施されました。大阪女子会からの参加者も含む5人を迎えて、いがちゃん、さちえさん、まりこさんをはじめとする島女子が島内を案内。

路地ですれ違う人々とのおしゃべりや、目の前で釣り上げられる魚、海女小屋でのピザ作りなど、島ならではの出会いや体験を通じて思い出を作り、帰りの定期船乗り場には、互いに別れを惜しむ姿がありました。

帰りの定期船内で参加者に話を聞くと、「なにもかも新鮮なことばかりだった。島の人がやさしく受け入れてくれた」「仕事の選択肢を考えると、移住は大変だと思った。でも、島にはまた来てみたい」と話していました。

あなたも、答志島を訪ねてみませんか。

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