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「生産者と消費者でつくるこれからの農業」をみかん畑で体得するインターン/アサヒ農園

日本人に最も身近なフルーツの一つ、みかん。その生産量は、ここ30年間で200万トンから90万トンへ。

大きく減少しているとはいえ、真夜中でも都会のスーパーにはみかんが並ぶ。記事を書くわたし自身、かつて東京に住んでいた頃はそうだった。

2015年に軸足を紀伊半島へ移すと、生産者のみなさんに出会った。80代もいれば、年下の人もいた。こちらで食べるみかんは、格段にうまい。真夜中のスーパーで買ったものよりも。

でも、このままではどんどん生産者が減っていくだろう。10年後、コタツの上には、みかんが並んでいるのだろうか?今から準備が必要だと思う。農家がきちんと稼ぎ、安心してみかんを生産できる環境づくり。それは農家と消費者をはじめ、みんなでつくるものだと思う。

まずは農業の今を実感してみませんか。2018年の7月から9月にかけて、畑の上のインターンシップが行われます。

(写真と文:大越元)

<どうなる日本のみかん>

日本で流通するフルーツは、アンズからレモンまで、約40種類と言われる。中でも、もっとも生産量が多いみかん。

紀伊半島には、和歌山県の有田みかん、「年中みかんのとれるまち」三重県御浜町といったみかん産地がある。2017年には、日本みかんサミットに参加して全国のみかん農家さんとも話したけれど…  どうやらみかん農家は、全国的に担い手が不足している。きちんとやれば儲かるにも、かかわらず。

「大きく2つの原因があるよね。農家が、自分のつくったみかんの価値を決められていないこと、そして畑の多くが山の斜面にあって、作業しづらいこと」。

そう話すのは、三重県南伊勢町で「内瀬(ないぜ)みかん」をつくる田所一成(たどころ かずなり)さん。

数年間の会社員生活を経て、家業へ。現在は、家族で2.5haのみかん畑を経営している。田所さんが一貫して取り組んできたのは、販路開拓と作業のしやすい畑づくりだった。

実は田所さん、地元じゃちょっと有名なみかん農家なんです。

<顔が見える人に売る>

田所さんは、販売において心がけていることがある。それは「自分が納得のいく出来のみかんは、自分で価値を決める」。

代名詞と言えるのが、銀座千疋屋に1つ1200円で並ぶ、せとか。取引が始まるまでに足掛け3年、田所さんは毎年通いつめた。

「日本一の売先に置いてもらおう。そう思ったんよ。毎年、サンプルの温州みかんを持って行っては『なんで置いてもらえないんやろ?』そう考えるのも刺激やった。すぐ取引にはつながらなくても、存在は覚えてもらえたんよな。で、3年目にせとかを持参した翌日やった。『明日から置けますか?』電話もらったんです」

銀座千疋屋との取引から、田所さんはたくさん刺激を受けた。

「いい加減なものを出したら、バイヤーさんが気づくんですよ。だからいいみかんづくりに励めるし、天候不順の年は、『今年は出せません』と素直にいう。信頼やね」「選り(より=選別)の感覚も磨かれていくよ。センサーで糖度を数値化するのではなく、“目選りの手選り”です。この見栄え、肌触りならいけるとね」

何事もまず試してみる性格の田所さんは、農業6次化の取組として、ジャムの製品化を試みたことがある。

「でも辞めたんですわ。中途半端な加工品をつくるぐらいやったら、みかんづくりのプロに徹して、販売、加工、料理のプロとつながったほうがいい」

三重県鳥羽市の人気洋菓子店「ブランカ」でジャムやパイとして提供されるデコポン。全国に根強いファンを持つ主力商品のハウスみかん。

どうしても食べたくて、片道3時間かけて買いに行ったデコポンパイ。おいしかった。

やみくもに取引先を増やすのではなく、一流の人と付き合う。すると、よい縁が広がっていく。たとえば納品先のフランス料理店。シェフが口コミで「うちは田所さんのみかんを使っているよ」とすすめてくれることで、新たな納品先と出会う。

だから、まずは今のお客さんの信頼に応えること。

<こんな畑やりたないわ!>

販路開拓に加えて、今後力を入れたいのが農地づくり。ここからは、田所さんの軽トラに乗って、段々畑を訪ねる。

「親父から継いだ時、真っ先に思ったんだよ。こんな畑やりたないわ! って(笑)」

どういうことでしょう?

「山を切り拓いた段々畑は、作業が本当にしづらいんだよ。かつては、この斜面一帯を草刈したんよ。今は緑のシート張ってるところもね」

さらに山の上へ進むこと5分。

「これは運搬用のロープウェイやね。昔の人は車道がないとこ、下から中継して荷物運んで、みかんを育ててきたんよ」

「昔の人はこなしてたかもしれんけど、僕らやりたないやん?(笑)。自分がしんどいことは、ちゃんとクリアして、次の子に渡さなあかんよ」

これまでも、段々畑での作業改善に取り組んできた田所さん。今後は、もう一歩進んで、段々畑にこだわらないみかん栽培を考え中。

「水はけええし、日もよう当たるし。たしかに段畑(段々畑のこと)にはいいみかんづくりの条件が揃ってる。けど、今の技術を用いれば平地でもおいしいみかんができるよ。段畑まで軽トラで移動したり、草刈りしてきた分、家の近くの畑で手間暇かけられたら。ひょっとしたら、もっといいもんできる」

みかん栽培の変化は、内瀬集落を巡るとあちこちで感じられた。

デコポン栽培の師匠と。左手は、南伊勢町役場の河村さん

道路沿いに作業しやすいみかん畑をつくった農家さん

<農家がちゃんと儲ける社会>

最後に田所さんは、インターンを通じてみかん農家を目指す人が現れたらと考えている。

「東京へ遊びに行くとさ、スーパー立ち寄って『うま(く)ないみかんを、高う売ってるなぁ』と。自分らのみかん売り込みたいわけじゃなくて…  みかん屋としては思うところあるわ」

どうしてそんな状況になっているんですか?

「市場や流通、間(あいだ)が一番儲けて、両端が損しとる。食べる人と、つくる人がね。市場に出せば、買ってはもらえるんよ。けど、虚しいぐらい安い。農家のやってることが報われないんよ。もし、働きたい人がいたら、まずはその人を儲けさしたらなあかん。儲けたら、ええものつくりたくなるよ。時間かかるかわからんけど、そういう仕組みつくっていきたいんよ」

田所さんから学ぶのは、農家を目指す人だけではないと思う。惹かれるものがあれば、問い合わせてみて。

田所さんは、初めてのインターンを募集しています。

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