和歌山県田辺市本宮町で「熊野古道の食を編集する」継業募集/熊野鼓動/和歌山県田辺市本宮町
食べものを通して、風土を伝えていく。
和歌山県の本宮(ほんぐう)に、紀伊半島の食材を組み合わせて加工品をつくる会社があります。
名前は、熊野鼓動。
ここで、働く人を募集します。
「今回は、先を見すえての募集です。僕は今年52歳、そろそろ次を考える時期だと思っています。そこで、ゆくゆくは工場の中心的存在となっていける人を募集します」
そう話すのは、工場長の安原(やすはら)さん。
仕事内容は、製造に関わる全般。工場での商品製造、原材料の調達を中心に、幅広くなりそうです。紀伊半島の食材にこだわるからこそ、農家さんのもとを訪ねたり、ともに収穫を行うこともあります。
まずは、読んでみてください。
和歌山県南部最大のまち、新宮(しんぐう)から熊野川沿いを車で40分。
約2,800人が暮らす本宮は、熊野本宮大社の門前町として、古くから参拝客が訪れてきたところ。
2000年に熊野古道が世界遺産に認定されてからは、海外からのバックパッカーも増えています。
ホームセンターやガソリンスタンド、行政局などが建ち並ぶ中心地から車で5分ほど進んだところに、熊野鼓動はあります。
迎えてくれたのは、工場長を務める安原(やすはら)さん。
出身は大阪。20年ほど東京で働いたのち、熊野鼓動へ。
「10年前、代表の横瀬に誘われたんです。彼とは、有機野菜の宅配事業を行う企業での同僚でした」
「東京にずっといてもな、と思っていた時期だったんですね。当時は独身で身軽だったこともあって、半分大阪へ帰るような気持ちでした」
熊野鼓動には、前身となる団体があったそう。
「80年代に地元の人たちが集まり、『本宮町田舎の味友の会』を立ち上げました。加工品をつくり、地元の道の駅などで売りはじめたんです。有限会社熊野鼓動となったのは、2005年のこと。横瀬をはじめとするIターン者が、地元の人と共同してきました」
「本宮は、平地が少なく、農産物の栽培に適しているとはいえません。そこで熊野鼓動は、紀伊半島の食材を探し、組み合わせていく。食を通して土地を伝える、編集者のような役割をはじめました」
たとえば、「熊野サイダーうめみかん」。
紀伊半島を車で走っていると、道の駅などで見かける商品です。
「ご当地サイダーって、香料や酸味料を入れることがめずらしくないのですが、うめみかんの原料は砂糖、青梅、みかん果汁。天然成分だけでつくりました」
原料の梅は、本宮で無農薬栽培されたもの。どうしてサイダーになったのでしょうか。
「無農薬で育てると、どうしても黒い斑点がつきますし、そもそも本宮の梅は、梅干しには適さない品種。そこで、砂糖につけこんで飲料にしたんです」
価格は200mlで260円。手にとりやすい値段ではありませんが、飲んでみると、惜しみなく原料をつかっていることが感じられました。そして、うめとみかんのブレンドが絶妙。食べなれた食材でも、組み合わせ次第で、新しい味を提案できる。そこに熊野鼓動らしさがあるのかもしれません。
商品がつくられるまで、工場全体を差配するのが、安原さんの仕事。
「販売の状況と相談をしつつ、生産計画を組み立てます。生産を行うのは、月曜から金曜の8時から17時。パートさんが効率よく働けるように、段取りが大切なんですね」
「また、原材料の手配も仕事のうちです。ポン酢のだしにつかう炙り鮎、じゃばら、麦味噌… どれも原材料をつくる人がいて、はじめて加工ができるもの。農家の高齢化が進むなかで、繁忙期に手伝うこともあります」
毎年ゴールデンウィークの時期になると、茶刈りへ。
「茶農家の倉谷さんは、ご主人が90代。刈入れの人手が足りないので、僕も一週間は茶畑に出ます」
このとき、工場の生産計画が欠かせない。
「茶刈りで工場を空ける前に、調合の加減が難しいドリンク類をつくっておきたい。再来週は茶刈りだから、来週ドリンクを仕込もう。そういえば、瓶と砂糖の在庫は十分あったかな… そんなふうに考えていきます」
長期的に、原料を安定して確保することも必要です。過去には、熊野鼓動自ら畑で生産に取り組んだこともあります。
農業の高齢化が進んでいく今後。生産加工にとどまらず、本宮における一次産業の仕組みから考えていく。そうした場面も出てくるかもしれません。
これから働きはじめる人は、まずは製造現場に入るところから。
1、2年ほどで一連の工程を身につけていきます。
「力仕事もありますよ。注文した砂糖を運ぶのも仕事です。30キロ入りの袋をいくつも運ぶのは、なかなか骨が折れます」
日々工場が稼働する中で、設備に不具合があれば業者さんにメンテナンスを頼むこともある。この日も、ボイラー交換を終えたところ。
ちなみに、経験は問わないとのこと。
「僕がここへ来た10年前は、工場長がいなかったんですよ。製造現場は未経験でしたが、一度見学に来て『この工場規模ならいけそうだ』と思いました。パートさんと話し合いながら、いまの形がつくられてきました」
これからくる人も、生産管理の経験があれば活かせるとは思います。けれども、経験以上に大切なことが。それは、一つひとつ学ぼうとしたり、楽しもうとする姿勢かもしれません。
ここで、安原さんが梅干しの様子を確かめに行くという。同行させてもらう。
「今年は、からっと晴れる日がなくて、ようやくお盆前に干しはじめたんです。今の状態を白干しといって、このあとシソの入った梅酢につけこみます」
軒先でお母さんが干すように、ころころと実を転がしていく。
「よく見ると梅の実も一つひとつ、違います。青い実は追熟させることで、熟度を合わせたり。手間は惜しまないほうが、いいものができると思います」
「一方で、手間をかけると、その分人件費などのコストもかかります。品質と売値とコストのバランスはいつも難しいですね」
梅の手入れをしながら、本宮での生活についてたずねてみる。
「東京にいた頃は、仕事第一でした。平日は、8時まで働いて帰宅が9時過ぎ。休日も職場の同僚と遊んで。楽しかったけれど、小さい人間関係の中で完結する感じがあって」
「いまは、ここでの暮らしや地域での活動にかける時間が多くなりました」
東京で働いていた頃から、自然エネルギーに関心を持っていた安原さん。熊野鼓動の工場長として働きながら、仲間探しをはじめました。そして紀南の仲間とともに『南紀自然エネルギー』に取り組んでいます。
これは、自然エネルギーによる発電を行い、売電による利益を地域へ寄付するプロジェクト。
2014年には、地域の人びとから建設資金の協力を受け、第一発電所を稼働。その利益は、地域の子育て支援NPOなどへ寄付されています。2015年には串本町に発電所を建てるため、資金の一部にあたる161万円をクラウドファンディングにて集めました。現在は4基目までが計画中。
「都会にいたほうがきっと給与はいいし、お金さえあれば、休日の過ごしかたもたくさん選択肢があると思います。今都会にいる人にとって、熊野へ来ることは一つの冒険かもしれません」
「どういう暮らしかたをしたいか、だと思うんです。自分で畑をはじめたり、夏場は仕事帰りに鮎を釣ったり、狩猟免許をとったり。あるいは、絵、写真、DIY、アウトドア… 仕事とは別に、自分の時間があることで、生活も豊かになると思うんです」
よければ一度、訪ねることをおすすめします。ぜひ自分の目で確かめてください。
<生活について>
住まい | 「本宮には大小50の集落があります。まずは市の用意する住宅に住みつつ、自分で空き家を探していくもよし。ぼくらが紹介できる場合もあるかもしれません。家賃は、安いところであれば月に1万円台からあります」(安原さん) |
移動手段 | 車がなくても通勤はできますが、行動範囲は狭まると思います。 「いざ住んでみると、基本の生活は、ここで間に合います。あとは週1で新宮に行けばね。車があると、とても便利。新宮(人口2.6万人)は40分、田辺(人口8万人)は1時間ちょっと。田辺の駅前は歩きで動けるしね」(安原さん) |
<募集要項>
法人名 | 有限会社熊野鼓動 |
募集職種 | 製造メンバー |
雇用形態 | 正社員、 パートタイム、アルバイト
※今回は、正社員を中心に、パート・アルバイトの方も募集します。ご自身の希望をふまえ、応募ください。 |
給与 | 月給200,000円程度/正社員 |
福利厚生 | ・保険(健康保険、雇用保険、労災保険等) ・年金(厚生年金) |
仕事内容 | 食品製造に関わる全般 原材料仕入、製造管理、農産物収穫手伝いなど。 |
勤務地 | 和歌山県田辺市本宮町本宮1301-2 |
勤務時間 | 8:00~17:00(休憩時間 12:00〜13:00) |
休日休暇 | 基本は日祝休です。GW、夏季休暇、年末年始、慶弔休暇、有給休暇 |
応募資格 | 資格経験学歴は問いませんが、仕事・生活に自動車の運転は欠かせません。 |
採用予定人数 | 1名 |
応募の流れ | まずは下記よりご応募・お問合せください ↓ 書類選考 ↓ 面接 ↓ 採用(試用期間3ヶ月あり) ・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します |
従業員数 | 2名 |