東京の学生と実現した鳥羽なかまちリモートツアー-鳥羽とリモートワーク後編-

鳥羽とリモートワーク-就きたい仕事と住みたいまち-

新型コロナウイルスの影響により移動が制限される中、コミュニケーションのカタチが変化しつつあります。企業はリモートワークを採用し、大学ではオンライン授業が急速に普及しています。多くの人が仕事と住まいをてんびんにかけて暮らす中、新型コロナウィルスは環境を一変させてしまいました。

今回は三重県鳥羽市におけるリモートワーク、リモートツアーの実践を、前編・後編を通して紹介します。

後編 東京の学生と実現した鳥羽なかまちリモートツアー

PROFILE 
芝浦工業大学「空き家改修プロジェクト」

芝浦工業大学が奨励して2003年度に発足。2015年には静岡県東伊豆町で空き家となっていた地元消防団詰め所をシェアキッチン「ダイロクキッチン」にリノベーション。30人余りの建築学部生、大学院生が所属する。

コロナで鳥羽に行けない?

「仕事」と並んで重要な「住まい」。

鳥羽市役所の調査によると、鳥羽市内には約750軒の空き家があります。空き家バンクも運用されつつ、鳥羽なかまちでは、住民自ら空き家の利活用に取り組んでいます。

前編に登場したリンダさんが運営するARTobaから徒歩2分。

かつて商店が建ち並んだことから「鳥羽の台所」と呼ばれた鳥羽なかまちエリアでは、住民自ら、空き家を活用するまちづくりが始まっています。

鳥羽なかまち会、合同会社NAKAMACHIとして活動する鳥羽なかまちのメンバーたち。2019年12月に東京・清澄白河のリトルトーキョーで「アートの裏路地ナイト」を開催。

そこで、「空き家改修プロジェクト」に参加する芝浦工業大学建築学部の学生たちと出会いました。これまでに徳島県木沢村、神奈川県開成町、新潟県佐渡市など、日本各地で地域住民との対話を元に、計画立案、改修、施設運用まで関わってきた空き家改修プロジェクト。次の活動の候補地として、鳥羽なかまちが挙げられました。

以来、空き家改修プロジェクトのメンバーは、鳥羽市を訪問する機会をうかがってきました。2020年3月には鳥羽なかまちの空き家を見学する「アートの裏路地ツアー」を企画。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大を受け、中止。2020年5月にも鳥羽訪問の計画を立てますが、緊急事態宣言を受け、再び中止となりました。

新型コロナウイルスにより移動がままならない中で、活動を模索する空き家改修プロジェクト。鳥羽なかまちのメンバーとWeb会議を重ね、「鳥羽なかまちをオンラインで訪問できないか?」というアイデアから、2020年6月20日に「鳥羽なかまちリモートツアー」が実現したのです。

リモートツアーとGoole マップの決定的な違い

リモートツアー当日。

鳥羽なかまちのメンバーは、Web会議アプリZoomの設定を行い、ツアーのコースを確認。初めての試みに向けて準備を進めていました。そして開始時刻の13時30分。モニター上には参加者の顔が映し出されました。

ツアーは、鳥羽城跡から鳥羽の海を一望する風景から始まりました。続けて、鳥羽なかまちの物件を訪問します。

1軒目は鳥羽大庄屋かどや。地元住民が「鳥羽なかまちのまちづくりはここから始まった」と話す建物です。

2006年に登録有形文化財に指定され、2011年から改修工事が行われました。2012年にかどや保存会が設立されると「かどやだけでなく、通りににぎわいをつくろう」と、鳥羽なかまち会が立ち上がったのです。


当日はテレビ局の取材も

2軒目に訪ねたのは、映像作家・佐藤創さんの事務所です。

東京から移住した佐藤さんは、地域おこし協力隊として鳥羽なかまちのまちづくりに取り組んできました。協力隊の任期が満了した2020年7月に「イエンスの塔」を開業。購入した元理容室の空き物件をセルフリノベーションしており、まさに生まれ変わっているところです。

3軒目はギャザリングスペース「クボクリ」。

元クリーニング店の空き物件が、鳥羽なかまちの玄関口へと生まれ変わりました。

この物件を手がけたのは合同会社NAKAMACHI。地元住民がオーナーと話し合い、物件を購入。リノベーションも自ら行いました。

1階部分をコワーキングスペース・飲食店としてオープンした後、2階をシェアオフィスに。入居者を募集する段階的リノベーションを実施しました。地元住民だからできる柔軟な進め方です。

3つの物件を訪問したところで、鳥羽なかまちリモートツアーは終了。参加者同士で感想を伝えあいます。

空き家改修プロジェクトからは、鳥羽なかまちグループ代表の4年・鶴井洋佑さん。

「以前にGoogleマップのストリートビューで、鳥羽なかまちを歩いたことがあります。それだけでもまちの雰囲気はなんとなく感じられたんですが… 」

「リモートツアーでは、鳥羽なかまちに住んでいる方から『ここは空き物件だよ』『あそこは移住した人が借りて住んでね』といった生の情報を得られました。みなさんが、鳥羽なかまちに根ざして暮らしていることも伝わってきたし、物件の内部にも入れたおかげで、リノベーションのイメージも一層湧きました。いろんなチャンスがあることに気づけたと思います」

鳥羽なかまちからは、濱口和美さん。

「リモートツアーの実施前は『オンラインでどれだけつながれるの?』という疑問がありました。ツアーを実施しても、わたしたちが一方通行で話すだけなんじゃないか、と」

「でも、違いましたね。画面越しに学生から質問をもらえたことで、お互いにコミュニケーションをとれるのだと実感できました」

どうつながる?都会と地方と

新型コロナウイルスにより物理的な移動が制限されうる状況下、都会と地方はどのようにつながるのでしょうか。

前編では「女子美大のリモート授業」、後編では「芝浦工大のリモートツアー」と、三重県鳥羽市におけるリモートの取り組みを紹介しました。今後も鳥羽なかまちでは、テクノロジーを活用して都会とのつながり方を模索していきます。地域に根づく人々の活動に魅力を感じたら、まずはオンラインでつながってみませんか。地域おこし協力隊の募集も行っていますよ。

関連記事一覧