初の仲間募集!道なき道つくるワイルドベンチャー「株式会社ゆらちょう」にて
「ゴールデンウィークはどこへ行こう。夏休みは・・・」
日本全国には約1,700の“まち”があるという。どの市区町村にも魅力があって、それぞれに発信も頑張っている・・・いるけれど・・・どれも決め手に欠けるというか。
「醤油と味噌発祥の興国寺があります」
「関西で人気NO1のキャンプ場『白崎海洋公園』があります」
「関西一安い戸津井鍾乳洞があります」
そうした広報を行ってきた由良町。
ここは今、「人とくらべると戦いになるし、いつか抜かれるし」という青年の考えによって、方向転換をしつつある。
彼の名前は、井上慶祥(いのうえ のりあき)くん。
23歳でひょんなことから「株式会社ゆらちょう」を起業。はじめは見積書の書き方も知らず、2年間でぐんぐん歩んできた。もちろん荒削りなところも回り道もある。だから、あたらしいものが生まれていく。そんな野生のベンチャーで、仲間を募集。
募集職種はデザイナーと農家。
就職先を考えている人はもちろん、大学生のインターン、そして高校生だって大歓迎です。だまされたと思って、井上さんを訪ねてください。応募する人がいなければ、僕が飛び込んでみたい。そう思わせてくれるインタビューでした。
<地元?人生の選択肢になかった>
まちの名前がそのまま、会社名になっているなんて。これだけのことを一人でやっているなんて。相当、まちへの想いがあるのかと思いきや…
これがまったくない。
「由良町に帰るつもりはなかったですね。和歌山自体、人生の選択肢になかった。たまたまたまたまたまたまたま…はじまったんです」
<ここにしかないもの?ないわけじゃないけど>
井上さんは、この仕事を始めてから日本各地のまちを巡る機会が増えた。
「由良町は海に面しているので、おいしい魚介類を特産品の一つとして売り出しています。シラス、海藻のアカモクに魚。でもね、日本全国どこの港町に行ってもおじちゃんが『うちの魚が一番』って口を揃えていうんです。間違いなくどこもうまい。うまいんだけど・・・」
そういって、井上さんが昼食に案内してくれたのは一軒の喫茶店。
いや、看板には「コーヒー お好み」とあるし、風になびくノボリには「ラーメン」とあるし、井上さん・・・なんだここ・・・
のれんをくぐると、この店をはじめて約50年。大川のおばちゃんがすじコンニャクを出し、目の前でお好み焼きを焼いてくれる。
生肉にこだわったすじコンニャク、めっちゃうまい。
そして、ちゃんぽん。
これが大川のちゃんぽん
これがまた、うまい。
ところで、魚はどこへ行ったのか、井上さん。港町へ来てなぜこの食べ合わせ?
「港が近いので漁師が多い。それから造船の工場もある。そこで働く人たちに、中華が好まれてきたんです。由良町には飲食店が10軒弱あるんですけどね、そのうち4軒が中華。そもそものルーツをたどると、一軒の中華料理屋さんに行き着くんです。みんな修行先は一緒だけど、味は同じじゃない。で、このまちの子どもはこの味食べて育ってきたんすよ」「このまちの子どもたちには、シラスもアカモクも由良わせもちゃんぽんも。みんな由良町のローカルフードです」
後日原稿に書き起こしてみれば、どこか不思議さの残る会話だけれども。あのすじコンニャクを食べに、大川のおばちゃんに会いにまた由良町へ行きたい。不思議とそう思う。
<株式会社ゆらちょうとは>
喫茶大川の片隅に、「Y LAND(ワイランド)」という冊子が置かれている。
手に取ると、井上さん。
「株式会社ゆらちょうでつくったんですよ」
夏場はおおぜいの日帰り観光客が押しよせる由良町。
それもそのはず。由良町は和歌山市から南へ車で1時間。そのロケーションにありながら、絶景をデッキから拝む「BOAT CAFE」
窯焼きピザのおいしい「BALORICCO」が軒を連ね、
泣きたくなるぐらいに夕日がきれいな「白崎海洋公園」もある。
あまりの絶景に、井上さんと恋に落ちそうだった
けれども、魅力はそれだけじゃない。たとえば、民宿。「漁師が営み、刺身がおいしい宿」「魚をイタリアンで提供してくれる宿」「お母さんが育てた野菜を提供してくれる宿」などさまざま。あるいは、観光スポットとして知られてはいても、そのストーリーを伝えられていないことも。
そこで、井上さんはデザインファームとともに、家族旅行をテーマに由良町の観光ガイドブックを製作した。実は、これが初めての誌面づくり。
この仕事を通して、あらたな由良町を知ったと話す井上さん。
人口6,000人のまちを舞台とした仕事は幅広い。町の移住定住促進のためのマーケティング・企画書作成、ニンニクを特産品とするための畝づくり・マルチシート張り。販路開拓のため、ふるさと納税、農産物輸出、道の駅の店舗設計。大学で講義を行うための資料作成・ファシリテーション・服装まで…
高校大学はけっして優秀な方じゃなかった。センター出願を忘れ、かろうじてD判定の大学に奇跡的に合格したぐらい。現在は年間200冊の本を読むようになった。
<今回の募集について>
今回は、どんな人に来てほしい?
「はじめたい人。デザイン、店舗設計、農業。なんでもいいから実践を通して取り組んでいきたい人。由良町で取り組んでいく観光とか農業とか漁業は、これから伸びていく分野。長いスパンで見たら、『ありなんちゃう?』ほとんどの人は由良町を知らないと思うし、面白そうと思ったら来てみてほしくて」
これまでの2年間由良町役場との事業が中心だった株式会社ゆらちょう。2018年度からは、由良町の民間事業者さんと仕事をしたい。町内には、造船会社から水産加工業、農家まで幅広い事業者さんがいるという。
そこで具体的な職種としては、デザイナーと農家。
<デザイナーと農家>
デザイナーって、どんな仕事をするのか。
たとえば、水揚げされたばかりのシラスを釜ゆでして、ここにしかない絶品に仕上げるご夫婦。ふらっと訪ねていける距離感で、彼らと話し合いながら、ときに漁の様子も見に行ったり、「ちょっと手貸してくれん?」と一緒に手を動かしながら、WEBやパンフレットをつくっていく。
「ちゃんぽんの話にも通じますが、おいしいってなんでしょうね。ひょっとしたら、品評会に出したら、釜ゆでシラスの味は、全国でそう変わらないかもしれない。けれど、そうやって時間を重ねることで、自分にとって唯一の味になっていく。その時間とか体験をデザインにこめていく。面白い仕事だと思うんです」。
「にんにくも同じです。自分で手塩にかけつつ、僕らとも話し合いつつ、パッケージをはじめブランディングも考えていく」。
僕も色々なデザイナーや農家さんに出会うけれども、「いいものをつくっていけば食べていける」時代はとうに過ぎていると感じる。一方で、教える現場は必ずしもその変化に対応できていない。Kiiでは高校生が進路を考えるコラム「高校生よ、はたらいてもいいんだよ。」も紹介してきた。これは個人的な考え方だけれども、一度社会に出てから、大学で学ぶという道筋もあると思う。
何より井上さん自身が、経営学を学ぶことなく起業してしまった人。彼も、ゆらちょうを同世代や年下の人たちがチャレンジできる場にしたいと考えている。
「始めてみることで、学ぶことは多いですよ」。
<やりたいことやってたら、まちは活性してる>
23歳で起業した井上さんは、大人から「まちを活性化させてくれよ」と声をかけられることも度々ある。
「でも、活性化させてどうするん?」
と思う。
「若い人がやりたいことに取り組める環境って、ありそうでなかなか見つからない。ぼくが、みんながやりたいことをやれていたら、結果まちが活性していました。その流れが自然だと思うんです」
<仕事ってなんだろ?>
最後に、井上さんの考える仕事ってどういうものか。
「今あるものを良くしたり、新しいものをつくること」「高校の時、体育祭でどーーーうしても玉入れやりたくて!。学校駆け回って、なんとか予算を調整して、実現して、みんな楽しくて。延長線の感覚がある。社会に出ると、そういうことが仕事になる。楽しくて、その稼ぎでまた新しいことが始まって」
株式会社ゆらちょうでは、はじめての仲間を募集しています。
(写真と文 大越元)