高校球児ってその後どう生きるの?紀南ひかり園の久保勇介さんに聞いた「部活のあとの道のつくりかた」/三重県熊野市
「高校生の自分に言ってあげたいこと?二つあります。『ぜんぜん選択肢になかったけど、面白い仕事に出会えたね』『はたらきながら、野球も続けてるね』って」
ここは三重県熊野市。
木本(きのもと)高校で野球に明け暮れた久保勇介(くぼゆうすけ)さんは、紀南ひかり園へ就職して11年目を迎える。
紀南ひかり園は、計60名ほどの知的障がい者が利用する南牟婁郡唯一の施設。「就職するまで障害者のことは、まったく知らなかった」久保さん。
紀南ひかり園では、ともにはたらく人の募集をしています。
今回は久保さんが26歳のとき、マスターズ甲子園で優勝した話も紹介。
はたらくってどういうことだろう。就職したら、好きだったことはどうなるんだろう。
特に今熊野市にいる中高生、かつて高校生だった大人たちに読んでほしいです。
<ひかり園に到着>
ひかり園に到着したのは、11:20。午前中の園芸作業を終えた久保さんに案内されて、食堂へ向かう。
<昼食も仕事の一つです(食事介助)>
11:40から昼食がはじまる。利用者も職員も、みんな一緒の昼食は、70人の大家族のよう。
久保さんは自分の食事を済ませると、利用者さんの食事を手伝う。ご飯をよそい、お茶を注ぎ、つい食べ過ぎてしまう人には、「おかわりは1杯まで」。
どこかおかんのような、スポーツトレーナーのようなこの仕事を、食事介助(かいじょ)という。
ご飯を終える人が現れはじめると、食堂の入り口に立つ久保さん。
向かった先は洗面台。歯磨きに向かう。
ここで、手の空いた久保さんをつかまえる。
-久保さーん、ちょっとお話いいですか。歯磨きの手伝いも、仕事なんですね
「そう、ぼくらの仕事は生活の支援です」「手を自由にうごかせなかったり、障害者の方は、健常者にくらべて虫歯や歯周病になる確率が高いんです。できないことは、手伝わせてもらいます。後輩見てても、すぐ慣れますね」
-最初は戸惑いとか?
「最初は戸惑いしかなかったですよ。実習のとき思いましたね〜『なんで大人が自分で歯を磨けんのやろ?』。でも、社会に出て学んだのが、相手ありきで考えることですね」
-相手ありき
「歯を磨くという自分にとっての当たり前が、利用者さんにとってはすごいこと。学生のうちは、自分中心でしたね」
ここで「コーヒー飲みに行きません?」と久保さん。
<喫茶室へ>
木のドアを開けるとそこは大にぎわい。
職員サポートのもと、利用者がいとなむ喫茶ベルスター。接客をまなぶという意味合いもある。
かわいらしいエプロンを着た利用者さんが、コーヒーを運んでくれた。
-「障害者のみなさんってどんな人だろう?」来る前はそう思っていたんですけど。あいさつをしてくれたり、よく笑顔を見せる方が多くてホッとしました
「みなさん、そう言ってくれるんです。三重県の職員の方や、紀南高校のインターンを受け入れると、初日は『障害者ってこわそう』とか・・・。どんどん変わっていくんですね」
-久保さんから見た障害者って?
「すなおな人がおおい。ぼくらは思っても言わないことがありますけど、彼らはすなおに出すんですよね」
–なんか目がきれいですね
-さっき、男の人がぼくのほうへ近づいてきたんです。『花の写真を撮って』と
「彼は花が好きなんですよ」
-60人以上いる利用者さんのこと、覚えているんですか?
「ええ、大体は」
-高校の先生だって、せいぜい1クラス40人なのに
「たまに名前間違えて『ごめんなさい』って言いますけど(笑)」
<散歩しながら聞いた「高校球児のその後」>
時計は12:40。
13:10のラジオ体操まで、久保さんと園内を散歩しながら、話を聞いた。
-あらためて、どうしてこの仕事に?
「野球が終わって、友達に誘われて東大阪にある保育士の学校へ入ったんです。実習で2週間、ひかり園に来た。それがきっかけですね」
-なんとなく福祉の世界に入って、最初は偶然だったんだ
「 で、はたらいてみたら人が良かったんですよね。高校生のときになんとなく思っていた『管理職はひじ掛け椅子にどーんと座って、下の人が走り回ってる』こともなく(笑)」「ほら、ね。あの人、ぼくの上司なんですよ。ほんと、気さくな人が多くて 」
-なんだか、いーところだなぁ
<仕事のおぼえかた>
-久保さんは、どうやって仕事を覚えたんですか?
「同じ仕事を、2度やってみるんです。1度目は、先輩について、仕事を見て覚える。次は、ぼくがやってみる。大丈夫、先輩が見てフォローしてくれました」
-福祉法人って、新人教育とかどうなってるの?なんか、ばくぜんと不安があります・・・
「1年間のOJT(On the Job Training)期間を設けています。食事介助、入浴介助、排泄介助といった各項目を、実務を通して身につけていく。いついつまでに身につけられるように、と手順も決まっています」
-最初のうち、失敗ありましたか?
「洗濯機が泡を吹きました」
-?!
「就職するまで、身の回りのこと、何にもできなかったですからね。タオル3枚洗うのに、洗剤入れすぎたんです。綿菓子みたいになるんすよ(笑)」
「1年目は失敗いっぱいしましたよ〜。今は畑も日曜大工もします。全部ここで覚えていきましたね」
ここで「ラジオ体操、行きましょうか」と久保さん。
<ラジオ体操の時間>
13:10になると、ラジオ体操がはじまる。
<園芸の仕事>
ここから午後の作業再開。久保さんは、ひかり園の園芸グループに所属している。
この日の午後は、冬を越えたバラの花が咲きはじめた花壇に柵を設置する仕事。
花壇には、冬を越したバラが咲きはじめた。
園芸グループでは、比較的障害の軽いみなさんと花や野菜を育てる。
<はたらきながら、甲子園優勝>
-今日は1日ありがとうございました
「ありがとうございました」
-あたらしいことにチャレンジする機会はあるんですか?
「あります、あります。一人で外出したいけれど、できなかった利用者さんがいました。なんとか叶えたくて。『青信号はすすめ、赤信号はとまれ』『青信号になったら、右見て左見てから渡りましょう』一緒に覚えて、実現したんですよ」
-それって、高校生がはじめてひとり旅に出るようなもの?
「そうです。あきらめていたことをできるようになる。それは利用者さんにとっても、ぼくらにとってもステップアップなんです」
-いい仕事じゃん・・・福祉の仕事ってそういう意味合いがあるんですね
「それから、ほぼ毎月イベントがあります。たとえば、ビアガーデンはある職員の『利用者さんたちに外でお酒を楽しんでほしい』という提案から始まったんです。今日の午前中は、ビアガーデンで食べるコーンを植えたんですよ」
-同じことの繰り返しのようで、去年と今年では変化しているんですね
「そうです」
-この仕事に就く上で大切なことってありますか
「生活を支援させてもらう。その気持ちだけですね」
<はたらきたくない人へ>
-高校生と話していて『はたらきたくない』って声も聞きます。その裏には、拘束されたくないとか、お金より時間の方が大事というおもいがある。その辺り、どうですか?
「ぼくはぜんぜん誇れるような話はないからなぁ。高校時代は野球しかしてなかった。友達が『保育士しようと思いやる』言うんで『俺も行くか』ぐらいの」
-就職してからも、やりたいことはできますか?
「めっちゃしてますね。ここでは言えないような遊びもしましたけど・・・(笑)。自由です、思ってたより。仕事は基本定時に終わりますし、休みの希望も出しますし」
「野球は続けてて。26歳のとき、マスターズ甲子園で優勝したんですよ。ぼくはセンターで。そういうのは全然できます。当時の上司に『甲子園行くんで、休みいただきます』と試合に向かいましたね」
「あとは、人かなぁ。意外に若い女性もはたらいていたり、全然違う仕事をしたリタイア後に再就職する人もいたり、愛知で就職した後に帰ってきた人もいたり。まとめると人がいいのはうん、大きいんじゃないかな」
「だからね、ぼくはすなおに『もっと色んな職員来てもええなー』っておもうんです。一度、訪ねてみてくださいね」
<ひかり園について>
社会福祉法人清光会 紀南ひかり園 障害福祉サービス事業所グリーンプラザも運営しています。 |
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募集職種 | 生活支援員 |
雇用形態 | 正規職員 |
給与 | 月給186,250円(高卒)*月4回の夜勤手当含む |
福利厚生 | ・賞与・昇給有り・保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)・退職金制度(三重県社会福祉事業職員共済会、独立行政法人福祉医療機構)・通勤手当・慶弔見舞金有り・福利厚生センターソウエルクラブに加入・職員親睦会 |
仕事内容 | 知的障がい者の方への排泄、入浴、食事等、日常生活の支援や園芸活動、軽作業、音楽活動、レクリエーション、散歩、ドライブ等の日中活動の支援を行っていただきます。また利用者の個別支援計画の作成や日々の記録のパソコンへの入力を行います。 |
勤務地 | 三重県熊野市有馬町4520-329 |
勤務時間 | 8:30~17:00(11:30~13:10の内、45分休憩) 他変則勤務及び夜勤有り。 |
休日休暇 | ・高校卒以上 ・普通自動車免許 ・働く意欲・熱意のある方、障がい者の立場にたって支援ができる方を求めます。 |
応募資格 | 経験、学歴問いません |
採用予定人数 | 2名 |
従業員数 | 57名(うちパート・アルバイト30名) |
応募の流れ | まずは下記よりご応募・問合せください ↓ 1次試験…作文、面接 ↓ 2次試験…実地試験(2日間) ↓ 採用(試用期間6ヶ月) ・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。 |