岡西精肉店の「牛スジ」(ポケットに紀伊をvo.1)
金曜日になると、牛スジを200グラム購入しに行く。
先々週は203g
先週は213g
今週は223g
そのうち300gになるかもしれない。300gを購入すると、コロケが七十円になるチケットを手渡される。(牛肉は場合200g、豚肉は300g)
帰り際に、さして腹が減っているわけでも無いのにあのコロケかミンチカツ、あるいはアメリカンドッグを買い食いするのがたまらない。
ミンチカツの肉汁は大層なもので包み紙をたちまち破り、手が脂まみれになる。
その精肉店の駐車場には合計6台の車が停められる。1から順に番号がふられているのだが、いくら探しても4がない。後から知ったのだが、そう、奈良市の駐車場には4がないのだ。
(友人のInstagramより)
駐車場にはいつもスリーポインテッドスターが輝いていて、メンチカツをいくつ売ったらこの車に乗れるのか計算をはじめるが、きまって途中でバカらしくなる。
家に帰ると、あらかじめ洗っておいた鍋に水1リットルをはり、牛すじを沈めていく。
火をかける。グツグツと煮こまれてゆく牛スジ。沸騰すると一度だけアクをとる。1時間半ほど煮込んだところで、ふたを開けてスープを5分くらい眺めていた。牛スジは、どうしてあんなにどうしようもないのだろう。あんなどうしようもなさが、大きな牛の体を支えていると思うと、やはりどうしようもない気持ちになる。牛スジにもプロフィールがあるだろう。どこで育ち何年生きたのだろうとぼんやり考えはじめるとスープがからからに干上がってしまう。すみやかに味をつけよう。砂糖、酒、醤油。
砂糖はいいものを使うけれど、醤油はキッコーマンでも十分おいしくなることがわかった。男のおいしいほどあてにならないものはない。いい調味料さえつかえばうまくなる、とついおもいこんでしまう。どうしようもない男を一つ捨てられたことにほっとする。
あさってからの出張にため息が漏れつつ、カバンに詰める牛すじがあることにホッとしている。
そろそろ火を落として、散歩に出る。
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岡西精肉店
奈良県奈良市大宮町1-52-12
9:00-19:30 日曜定休