その風景は、まるで通勤電車。島と本土を結ぶ定期船船員を募集(後編)/三重県鳥羽市

Toba chairs(トバ チェアズ)は、三重県鳥羽市が企画する仕事紹介プロジェクトです。紹介するのは、鳥羽市在住の2人のクリエイター。今後、6つの仕事を紹介していく予定です。第二弾として、「答志島保育所の保育士さん」を紹介します。

(文 鼻谷年雄/写真 佐藤創(はじめ)/ ロゴデザイン 勝山浩二/ 編集 Kii)

船長が心がける「もてなし」

定期船の舵を操るのが、船長。文字通り船のトップ責任者です。今回は、定期船「かがやき」号の船長である山下松吾さんを訪ねました。

「今日はかがやきがメンテナンス中なんです。だから、旧式の船なんですよ。そのことだけ、ちゃんと伝えてほしいな」

そう話す山下さんは、40代前半とはいえ18歳から船に乗るベテラン。以前は家業である砂利運搬船の仕事に就いていました。

同じ船でも、変わったことはありますか?

「乗る人のことを気遣うようになりましたね。何よりもまず、安全運転を心がけます。ミスは、人のケガにつながってしまいますから」

ここで質問してみる。定期船って、誰が運転しても同じなのだろうか?

「腕の見せ所、ありますよ。波が高い日は、できるだけ船体の揺れが少ないように気をつけるんです。乗客のなかには、漁師さんもいる。日ごろ船を運転するからこそ、目が厳しい(笑)。『今日の運転は』と感想をもらうこともあるわけです」

なるほど、安全はあって当然のこと。そこにどう、もてなしを乗せるのか。

機関長が心がける「もてなし」

客席へのもてなしは、当然欠かせない。

前編では、甲板員の尾崎文成さんを叱る厳しい上司として紹介した勢力成智機関長。自ら船内の手入れも行う。

ところで、なぜ機関長と呼ばれるのか。

それは、機関室の責任者だから。

「今回は、特別ですよ」。

船底へ案内していただいた。

天井は低く、狭い。そして暑い!

「室温は見てませんが、40度は超えてると思います。あ!エンジンには触れないように。ヤケドするんで」。

エンジン、油圧装置、発電機などが効率的に配置されている。点検は毎日行う。1日6、7回は計器をチェック。簡単なメンテナンスは機関長自らの手で。万が一、大きなトラブルが起きたら、速やかにエンジニアへ相談。お客さんの安全と快適さを守る体制が、しっかり整えられている。

ところで勢力さん、どうしてこの仕事に?

「親父が漁師なんです。子どものころから、よく船に乗ってて。漁よりも船の仕組みに興味を持ったんですよ」「機械を触るのが好きだから、自分には合っています」

勢力さんは商業高校を卒業後、定期船の仕事に。桟橋の作業員や甲板員として働きながら、国家資格である海技士かいぎし資格を取得。今年で24年目を迎える。

定期船の司令塔に聞いた、船員の心構え

「まだ若いけど、あの2人なら任せられますよ」

山下さんと勢力さんへ厚い信頼を寄せるのは、運航管理者の矢田和昭さん。

運航管理者とは、いわば定期船の司令塔。佐田浜港内にある市営定期船事務所をベースキャンプに、6隻の定期船とたえず情報更新を行う仕事です。

かつて、自身も外洋航路の船員だった矢田さん。船員にはどんな心構えが必要なのでしょうか?

という自然が相手の仕事ですから、雨や台風もよくある。そういうのと付き合える大らかさですね」。

矢田さんは、随時気象データを収集。6隻の船からは、風向きや波の高さ、視界の深さを目測して定期船事務所へ報告が来る。それらの情報を照らし合わせて、ダイヤ調整と人員の配置にあたる。

荒天時には、欠航を判断することも仕事のうち。

むすびにかえて定期船がつくる島の風景

これまで紹介したように、定期船は海陸多くのひとに支えられて、毎日運行されている。そして、わざわざ言葉にはしないけれども、一人一人がこだわりを持って仕事をしている。

では、その仕事はどんな暮らしを支えているのか。

出港直後の定期船から望む佐田浜港。

定期船は答志島の桃取港へ到着。貨物積み下ろしを行っているところ。

桃取にある食品店。

折り返し便。島民に混じって、観光客の姿。

桃取港を歩く。

そら豆をさばくおばあちゃん。

これら何気ない生活の風景を、定期船船員の仕事は支えています。

興味を持った方は、ターミナルである佐田浜港を訪ねてみてほしい。そして、定期船に乗ってみてほしい。もっと知りたくなった方はぜひ、鳥羽市の定期船課に仕事の中身を聞いてみてください。

<募集要項>

募集職種 船員(甲板員、嘱託職員)
給与 初任給月額 173,900円(昇給、時間外手当、期末手当あり)
仕事内容 定期船に乗り組み、運航のアシストを行う
勤務地 鳥羽市の各離島
勤務形態 月15日程度(1日10時間20分程度)勤務
採用人数 1-2名
応募の流れ まずは下記まで電話で問い合わせてください
鳥羽市定期船課0599-25-4776

 

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