南伊勢暮らし「子育て編」vol.3
前回までの記事で、南伊勢町の子育て支援制度や保育所の紹介をしました。今回は、実際に町内に移住して子育てをしている主婦の方々に、南伊勢町で子育てをするメリットやデメリットなど、リアルな体験談をお聞きしました。
お話をお聞きした人
・西井夕紀子さん(2019年3月に移住)
・菊田真実さん(2019年2月に移住)
インタビュアー 西岡奈保子さん
2018年7月に南伊勢町へ移住。個人事業主として「コミュニティデザインこどものめ」を運営士、愛知県を中心に保育園のコンサルティングなどを行っている。
・キーワードは、自然環境
奈)はじめに、お二人が移住されたきっかけを教えてください。
真)旦那が第一次産業に携わりたいという気持ちがあったことと、子育てを自然が豊かな場所でしたくて、色々探した結果、名古屋市から南伊勢町に移住しました。
※菊田ご家族は、『南伊勢をあるく vol.2 贄浦編』で取材させていただきました。
夕)うちは旦那が南伊勢町出身の人で、名古屋市から帰ってきて、かんひちやの系列で介護相談ができるお店を始めました。
私はもともと岐阜県中津川市の出身で、山や川ばかりの場所に住んでいました。だから名古屋市で子育てをするイメージが湧かず、子どもは自然の多い場所で育てたいと思っていました。
奈)お二人とも自然環境が移住のキーワードなんですね。実際に移住してみて、自然の中で子どもを遊ばせる場所はありますか?
夕)今は新型コロナの影響であまり外出できず、基本は庭やプールで遊ばせています。ただ、海が近いので海岸で貝を拾ったり、山へ虫捕りに行ったりします。他には近くの五ヶ所公園で遊ばせることもありますね。
真)私が住んでいる集落には阿曽浦漁村広場があって、三輪車を持って行って遊んだり、海の方まで行って遊ばせることもあります。公園に行きたがる時は、なかよし保育園の側にある奈屋浦公園に連れて行きます。
奈)やはり海や山が近くにあるのが魅力なんですね。近くに公園があるのもいいですね。しかし都会のように大きな公園は町内にありません。宮リバーパーク(度会町)など隣町などまで行くのも良いかもしれませんね。
真)宮リバーパークはよく行きます!
・南伊勢町で子育てするメリット・デメリット
奈)自然環境は大きな魅力ですが、他に気づいたメリットはありますか?
夕)南伊勢町では道ですれ違う人と挨拶し合うんです。名古屋市では知らない人に声を掛けたら不審者扱いなので……。挨拶しちゃダメって教えるよりも、「こんにちは」って言って喋ったりできる環境で育つ方が良いと思います。
真)私の方も、外にいるだけですごく話しかけてもらえて、ご近所さんの中には「こっちで遊んできな」って言って子どもを家にあげてくれたり、「最近疲れてそうだから」って、子どもを預かってくれることもあって助かってます。
奈)都会とは違って近所に知らない人がいないから、安心して子どもを外で遊ばせられることも魅力ですね。
真)意外と原付が多いので、それは気をつけてます。
奈)なるほど。他にデメリットはありますか?
真)病院(小児科)は伊勢市まで出るしかなくて、車で片道40分以上かかります。引っ越してきたばかりの頃は子どもがまだ1歳で、よく風邪を引いていたので何度も病院に行くことは大変でした。子ども用品の買い物も、近くに薬局やおむつを買える場所がないので、ネットでまとめ買いしています。
夕)うちはすぐ近くに町立病院があって、先生がすごく良い人で、ゆっくり話も聞いてくれます。急に熱を出した時も電話をしたら、「見てあげるからすぐおいで」って言ってくれて。子どものことを覚えてくれていて、「今日はどうしたの?」って声を掛けてくれたり。
奈)お店や病院が近くにないことで、不便に感じることはありそうですね。ただ、南伊勢町の中でも地区によって利便性が大きく異なるんですね。移住する前に、要検討ですね。
主婦から見た保育園事情
夕)保育料が無償なのは本当に助かってます。延長も無料なんです。かかるお金といったら、会費や写真の集金くらいです。
奈)真美さんは愛知県でも保育園を利用していたそうですが、違いを感じることはありますか?
真)私は愛知県の中でも大きな保育園を利用していたので、1学年2,3クラスありました。先生たちも忙しそうであたふたしている印象だったんですが、こっちは人数も少なくて、ゆったりしている感じがします。
奈)その違いは子どもにすごく影響するでしょうね。人数が少ない分、一人ひとりにちゃんと向き合ってくれるのも良いですね。
夕)保護者への情報共有も多いです。1クラスに2人先生がいるので、迎えの時にその日の子どもの様子などを色々教えてくれます。
奈)なるほど。やはり保育園に関して都会と比べたメリットは、待機児童がいないことだと思います。年度途中でも入園することが可能だし、兄弟で違う保育所に行くなんてこともないから安心ですね。
夕)デメリットは、習い事の選択肢が少ないところだと思います。近くにあるのは、ー算盤や習字、あとは絵を書いたり物を作ったりする教室などを、保育園が紹介してくれることもありました。
真)子どもは体力が有り余っているので、サッカーなど身体を動かす習い事をさせたいんですけど、そういうのはやっぱり近くにはないですね。
夕)今は子育てしやすいけど、中学高校に行ったら不便なことが増えそうで不安です。バスも少ない(電車もない)から、部活や習い事、塾などの送り迎えも大変になるかも……。
・子育ての不安
奈)これから小中学校へ進学していくにあたって、他に不安はありますか?
夕)人数が少ないから、きっと一人ひとりしっかり勉強を教えてくれる。だけど、都会の子は習い事や塾に通っていると思うと、不安になります。
奈)同級生が少ないことは、メリットとデメリットがあると思います。その辺りはどう考えていますか?
夕)競争に揉まれず、ゆったり育ってくれると思います。ただ、将来にこの町を出ていった時、関わってきた人が少ない分、ちゃんと人間関係を築けるかは不安です。
奈)たしかに、同世代が少ないのは寂しいかも。反対に、色々な世代と関わる機会は格段に多いと思います。地域の大人と関わる機会や、自分たちが主体的に何かをやる機会も多いから、誰に対しても自分の意見を伝えられるように育つのかもしれないですね。
・移住希望者へのアドバイス
奈)最後に、南伊勢町へ移住を検討している子育て世代にアドバイスをお願いします!
夕)「みんなで子育てをする」という感じで、地域の人が子どもを気にかけてくれるから、本当に子育てはしやすいです。
真)子どもにとっても、みんなに守られているっていう空気を感じて、安心感があるのかもしれないと思ってます。
移住の際も、役場の方がすごく親身になって話を聞いてくれました。そこまで心配する必要もなかったなと。とりあえず来てみたらいいと思います。
奈)そうですね、来てみたらサポートしてくれる人は沢山いますよね。是非お二人にもこれから移住してくれる方をサポートしていただけると嬉しいです!
子どもが大きくなるにつれて、教育や習いごとの選択肢が少ないことに不安はあると思いますが、「心の土壌」をつくる幼児の時に、子どもたちが生命のつながりの中で生きていることを「体験」することが重要だと思います。太陽、水、土、泥、緑などにふれることや、小さな昆虫の命に自分の命を重ねたりして、多種多様な生命とのつながりを実感して、人として大事なことを沢山学んでほしいですね。
お話を詳しく聞かせていただき、ありがとうございました!今回対談に使わせていただいたのは、町内の五ヶ所浦にあるかんひちや介護センターです。介護用品のレンタルなどを行っていますが、休憩がてら散歩の途中など、気軽に寄ってほしいとおっしゃっていました。
かんひちや介護センター
住所…〒516-0101 三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦3918