• HOME
  • Kii
  • 暮らし
  • 「日本ミツバチを飼い、ハチミツを採る」という遊び/岡田亥早夫/十津川村トライアルステイ

「日本ミツバチを飼い、ハチミツを採る」という遊び/岡田亥早夫/十津川村トライアルステイ

image001

<十津川村の人>

出会う人によって、毎日は大きく変わるもの。週3日働き、週4日住まい遊ぶ十津川村トライアルステイ。人を訪ねてみませんか。

第1回は、岡田亥早夫(いさお)さん。2008年に神納川(かんのがわ)地区へUターンしました。週6日は家業である土木現場ではたらきながら、神納川地区を駆け回っています。神納川HBP(ハッピーブリッジプロジェクト)の事務局長として農家民泊の受入れや、子どもプロジェクト(子どもたちの山村留学)受け入れを行ってきました。また原木しいたけ栽培にも取り組んでいます。

今回は、3年目を迎えるという「日本ミツバチの飼育」について話をうかがいました。

時計は17時半。仕事終わりの亥早夫さんに、日本ミツバチの“みつうど”を案内していただく。雑木の山を登ること5分。みつうどが見えた。

image003

ブンブンと、ハチの羽音が聞こえますね。

この中に日本ミツバチがいます。昼間はみつうどの中が暑くなるから、暑い日は入り口にハチが集まってね。羽で風を送るんです。

ハチは、分蜂(ぶんぽう)といって、集団引越をするんです。4~5月頃に巣の中に新しい女王蜂が誕生すると、元の女王蜂が働きバチを半分くらい連れていくんです。そこで、新しい家として、みつうどを用意する。入ってもらうには、いくつか条件があってね。

見晴らしの良いちょっと突き出た丘とか、目印となる大木があるとこ。巣のまわりに草が茂ってこなさそうなとこ。それから、ぜったいに崩れなさそうなところ。

このみつうどがある場所もそうですね。朝日が当たるから、ハチが早い時間から動ける。昼間から夕方にかけては西日が当たらんから、巣の中が暑くなりすぎない。去年は、西日にやられて、溶け落ちた巣があったんです。

<ハチはかしこい>

 image005

ハチは、自分の過ごしやすい環境を見つけるのが上手なんですね。

ハチはかしこいよ。昔から、ハチが低いところに巣をつくる年は台風の当たり年やって言います。ここらへんでは、4、5月に分蜂をして、蜜を採るのが7月~8月。2011年は、村内のいくつかの集落でハチがいなくなり、ハチミツが不作やったんです。その年に、紀伊半島豪雨災害が起きた。もしかしたら安全なところに逃げとったんかなと思います。

環境の変化にはすごい敏感です。近所のおじさんが飼うとるみつうどの一つが、街灯の近くにあったんです。街灯の電球が白熱灯からLEDに切り替えられた翌日、ハチが逃げて巣が空になったこともあるらしい。

亥早夫さんは、どうして養蜂をはじめたんですか?

神納川HBPの事務局として、ここに来てくれたお客さんを、ハチの師匠のもとへ案内したのがはじまりです。地区内には、ハチを飼っている方が何人かいます。案内したり、ハチミツを食べたり、ジャムをつくっているうち、自分もやってみたくなったんです。

1年目は「ハチが入ってくれたらラッキー」と。2年目はハチが入ってくれたけれど、害虫のスムシにやられたり、暑さでハチの巣が落ちてしまった。

3年目の今年は、入りそうな場所がなんとなくイメージできてきたんです。2年分の失敗や、師匠がみつうどを置く場所を照らし合わせてくれて。「うん。ちょっとこの、ここらへんか」。20カ所に置いたみつうどのうち、4つ入ってくれました。あとは、今年こそ蜜を採る。

<ハチという遊び>

僕は神納川がすごい好きやったし、大阪ではたらいていたときから戻るつもりでいました。田舎をもっともっと楽しみたいし、伝えたい。こんな山奥やからこそ、できる遊びをしたいんやな。

image007

その一つがハチです。みつうどづくりには、ここでの生活の色々なことが、詰まってます。巣箱をつくるには、丸太を調達して、チェーンソーでくりぬいて。中を削って入り口をつけたり、台や屋根をつくったり。

みつうどの形も、人それぞれです。口の長さ、大きさ、位置。

口は小さすぎても、大きすぎてもだめ。日本ミツバチはすんなり通り抜けられても、シシバチ(スズメバチ)は通さない。数ミリの、絶妙な差なんやけども。

俺はまだ始めたばっかりなんで、「これ」って言う自分の形にはたどりつけてないですね。色んな人を参考にして、「今回どういう形にしようか」と毎回考えます。もう。

時間をかけて形にしていくんですね。

そうです。すぐにはできんことが、楽しみにつながるのかな。

「なんでこの形なん?」「どうしてここに置いたん?」地域によっても違うし、なかなかマニュアル化できません。だからこそ、今までやってきた人から直に教えてもらう。

面白いよ。ハチを通じて、色んな話を聞かせてもらいます。くわえて、体によくておいしい。家族もすごい喜んでくれます。

みつうどつくるのも、そこへ巣をつくるのも時間がかかるけど。たまにみつうどを見に行って、ハチの姿があったら。

image009

「気に入ってもらえたんですね」。

こんなにありがたい話はないよ。

入ったときの喜びといったら、もう。2年、3年越しです。ずっと「ほんまに入るんかな」「入ってほしいな」と思っていたから。

image011

去年は、少しだけハチミツが採れたんです。今年は余すところなく、採りたい。

-もっと知りたい人は、亥早夫さんを訪ねてもいいですか?

うん。ハチを飼うって、ちょっと変わったことや。なかなかやろうとはならんと思うけど(笑)。類は友を呼ぶ、って言うやん。興味を持ったり、なんかのきっかけや縁で来てもらえたらありがたいですね。

<十津川村トライアルステイ>

image013

<十津川村の人>

kamiyatop

順次公開していきます。

関連記事一覧