奈良東吉野村で仏師の弟子募集/安本佛像彫刻工房/安本篤人
ありがとうございます。こちらの求人は募集を終了いたしました。
3月13日、奈良県吉野郡の東吉野村で、一人の仏師と出会いました。
安本篤人(やすもと あつひと)さん。奈良出身、現在34歳の若き仏師です。
今回、弟子を募集します。
仏師と聞くと、言葉数が少なくて、気難しいイメージさえあったのですが。安本さんはよくしゃべるし、笑うし、どこか人くさい。いい意味で、イメージが崩されました。その人となりに触れられたらと思い、今回は、インタビューをほぼ書き起こしで紹介します。(話し手:安本篤人 聞き手:大越元)
<工房を訪ねる>
ここねぇ、いいよ。窓を開けたら川の音がして。
–どうして東吉野村へ来たんです?
OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO(オフィスキャンプ東吉野)というシェアオフィスを運営するデザイナーの坂本大祐(さかもと だいすけ)さんがおって。知り合いが「面白い人おるでー」って連れてってくれたのがはじまり。
俺な、人とのご縁がすべてやと思ってる。仏像彫ってると、どうしても自分の世界にこもりがちになるねやんか。「仏師はこもって黙ったほうがええ」いう人もおんで。でも俺な、とにかく外へ出ようと思って。
-机の上の仏像、安本さんが彫ったんですか?
そう。国宝第1号の弥勒菩薩を“彫り写し”てるんです。来年の個展に向けて、作品ためてて。
–作品も仕事もするんですね。
仕事とわりきる仏師もおるんですけど。俺は作品もつくってます。お金は必要やけど、仏像づくりは労働ではない。生きかた、自分そのもの言うか。
それに仕事の相談受けるときも、現物見てもらったほうがええやろ?「どんなんできんの?」「こういうものつくってますよ」って。
こっちは、木取り(きどり)といいます。まずシルエット描いて。最初2Dでしょう?それを正面と横から切って、3Dにしていくんです。
<仏師になる>
-安本さんはどうして仏師に?
…なんでですかねぇ。
子どものときから、図工とか絵描くの好きだったんですよ。そっちに進もうと思ったけど、色んな事情で四大進んで。けど、進路に悩んで。ある日突然、周りがみんなスーツ着だして、100社ぐらい受けだすの見て「しょうもなー」と思いつつ、自分が何していいかわからん。考えても、考えても。
そんなとき、ほんまにふらーっと東大寺行って「持国天(じこくてん)」を見た。
そのとき、なんかね、すごいこう、なんやろな…
あったかく、やさしく、心強く感じた。
「ええんやで」と言われたような気がした。
どのくらい持国天を見てたんかな…
「こんな像を自分も彫ってみたい」。いても立ってもいられなくなって。
先生探して、訪ねて。大学3年で辞めて、弟子入りしました。日中は師匠の手伝い、夜自分の彫って、道具を仕込んで。それから色々な先生のもとで、延べ8年弟子をさせてもらいました。
そのあと、一人で勉強した時期があります。毎日寺行って、かたっぱしから仏像を見てたら「あんとき先生言ってはったん、これちゃうかな」。すっと入ってくる感じがあって。
仏師として生きることを決めた2014年、工房をかまえました。
俺は、一人の有名な先生のもとで長いこと修行したわけでも、美大を出たわけでもありません。「注文はどこから来るんや?」そんなスタートやって。一生懸命やっていると、人づてに声をかけていただいた。そうして今に至ります。
<安本佛像彫刻工房が考える仏像>
–仏像はどういうものですか?
自分自身と周りの人が豊かになるきっかけを与えてくれるもの。 仏像は、色んな人の色んな思いを受けとる器であり、拝む人の内面を写し出す鏡。そう考えています。
俺は奈良生まれやから、日ごろから仏像が身近にあったけど、ずっと“古くさい”と思ってた。けど、大学3年のその日、東大寺の持国天を見たときはとても心地ようて。
同じお像でも、見る人の思いや状態によって変わるんやなと思った。
<安本佛像彫刻工房が大切にしたいこと>
人がすっと祈れる仏像の姿をつくりたい。
彫ったもんには、出るから。いくら口でかっこええこと言うても、ぜんぶバレます。仏像に、観たくなかった自分が出ることもある。やから、むちゃくちゃしんどいときもあるけど、楽しい。きれいで、すなおでおりたい。
うん。
すなおにおれるようになるよな、仏さん彫ってたら。
<弟子を募集します>
–募集するのは、住み込みの弟子ですよね。基本的に給与は出ませんが、住居と食事は提供される。どんな人がいいですか?
表面的な欲で言ったら、手先が器用で彫刻の素養があって、即戦力で来てくれたら一番ええけど…
ご縁やと思うねん。どうしようもないの来るかもわからへんやないか(笑)。でも、なんか知らんけどそいつ、必死にくらいつくかもしれないやん。わからん。でも、もうそれ… 受け入れます。ほんまに。
ただ、一つだけ。
すなおであってほしいな。頭でっかちになってるうちは、入ってこないんや。話逸れるけど。生きてく上で、大学出がいいとは、かならずしも思ってなくて。職人の世界には「中卒金の卵」って言葉があんねん。人間すなおだと、すぅーっと、スポンジに水入ってくように吸収するよね。
–弟子入りしたら、何からはじまりますか。
まずは道具を持つこと。かじ屋さんに頼んで、刃だけ買うてね。それを研いで。柄は自分の手に合うかたちに削っていきます。俺のときは、彫刻刀100本と他の道具もろもろ買うて、50万円ぐらいだったかな。親方の名前でツケがきくんよ。毎月少しずつ返して。そのうち、足らんようになってきます。俺で今、150本ぐらいあるな。
それから、「一緒に家直すで〜」って言うでたぶん(笑)。工房は、今年の2月に越したばかり。掃除もこれからです。住み込みやし、まずは生活を整えな。「お前飯どないすんねん」「車の免許持ってんのか」とかね。
で、やっぱり色んな話せなあかん。「なんでこんなんしたいんや?」「俺はこうやけど」「なんで一生懸命がんばるんやろ」。自分将来どうなりたいんか。わからんかったらわからんでええから。
–弟子入りを考える人に、伝えておきたいことはありますか。
「仏師を目指すこと」に安心して専念してほしいよ。
俺、2度弟子をクビになってます。仏様をつくる以外の部分で、道を閉ざされた感がすごくある。
自分が弟子入りしたときは、師匠の家事の手伝い、兄弟子が飲みに行くときの送迎も仕事やった。どれだけ理不尽だったり、「人としてどうなん?」と思っても、絶対に自分の意見を言ってはあかんかった。耐えて、耐えたけど… 口から出てきてしまったなぁ。泣いたなぁ。
自分の弟子には、何よりまずあったかい人でいてほしい。ご近所さんにあいさつする、とか。どれだけ技術があっても、いやなやつだったら性がないと思うんです。
–技術面はどうですか?
何年も道具握らさん親方もいてるけど、うちは早くから実践をさせたい。失敗もするけど、やっぱり現場でやってかへんと、力つかんと思うから。
仏師になりたいんやろ?できるだけ仏像に向き合う時間を持たせてあげたいわ。
ホンマにやりたいって思わんと、できないから。なかなかご飯食べれる職業でもないし。ただ、コツコツすなおに前向きに、好きでやってほしい。
技術はついてきます。毎日きちんと木削ってたら。大丈夫。もちろん、正統な古典技法は一通り、しっかり叩き込みます。
<一緒に仏師の道を歩きませんか>
誰に弟子入りするか、ってありますよね。めっちゃえらい先生とこ入ったら、安心感はあるんじゃないかな。一昔前の“大企業志向”じゃないけど。そこから見たら、俺なんかめっちゃペーペーです。仏師としては、まだなにもやってない。
でもな、「安本と一緒やから面白いことできるで〜」というのは、あると思うんよ。あんな、大仏彫りたいなぁと思って。大仏、彫りたい。あれ、建築やん。足場組んで、チームプレイで。そういうのも、一緒にやりたいよ。
弟子入りを考えるあなたに、気負いとかあるかもしれないやん。俺にもあるんですよ。すごく。本気で関わらなあかん思てる。「教えてやる」という姿勢とったら終わりや、一緒にやっていこうて。俺が教わること、めっちゃあると思っています。
<仏師の生活>
仏師言うても、色んな人がおる。人と会わず、ひたすら技術を追い求める道もあるでしょう。
現実との狭間をちゃんとバランスとって、うん。やらなあかん。俺はそう思ってる。今俺には家族もおる。妻がいてくれるからできることも、すごくありますよ。
弟子の間も、恋人にいてほしかったり、たまには友だちと映画も行きたいやん?
そっか、仕事つくったらなあかんね。最初からは無理やけどさ、月々のお小遣いぐらいはあげれるように。弟子って家族みたいなもんですから。重たいか知らんけど、親やから… 俺ももっとがんばらな、やっぱり。
<最後に>
将来独立するか、俺と一緒にやっていくかはあなたの意志やから。基本は大事やで、しっかり叩き込むけど、「これしかあかん」と押さえつける気はありません。自分の意志は持っててください。仏師の道はしんどい、きびしい、むずかしい。けど、やっぱ最後おもろいよ、ぜったい。俺もあるから。出てきてほしいねんな。誇り持ってやってほしいよ。
ありがとうございます。こちらの求人は募集を終了いたしました。
<募集要項>
安本佛像彫刻工房 | |
募集職種 | 弟子 |
給与 | 基礎修行中の3年間は工房での生活となります。食費、最低限の生活費用を渡します。※決まった給料はありませんが、実力に応じて優遇します |
福利厚生 | 国民年金、国民保険を自身で加入してください |
仕事内容 | 正統な仏像彫刻の基礎技術の習得。工房造りや下働き、地域の人々との交流により社会人としてレベルの高い礼儀やマナー、コミュニケーション能力を身につける。「自立」した人間形成を行うとともに技術、表現力ともに卓越させる。昔ながらの方法で育成しつつも本人の個性や、人間性を尊重しその人が最も幸せに生きていける方向性をサポートします |
勤務地 | 奈良県吉野郡東吉野村三尾825 |
勤務時間 | 8:00-17:00(休憩 12:00-13:00) |
休日休暇 | 日曜日、祝日、盆、正月、ゴールデンウィーク、その他冠婚葬祭、研修休暇(古仏研究)を与えます |
応募資格 |
未経験可、経験者優遇。住民票を奈良の工房に移す必要あり。とても魅力ある奥深い仕事です。人より鈍くさくても不器用でもいいから、ひたむきに努力する意思があったり、人の心を思いやる優しい気持ちの持ち主であることが一番大切です。素直にまっすぐ親方と一緒に努力していける人であることが仏様を彫らせていただく正しい姿勢だと考えています。厳しかったり、親元を離れて辛いこともあるでしょうが、本当におもしろいことができるところですので一緒におもしろいことをしましょう! |
採用予定人数 | 1名 |
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