三重県一の果樹産地で農家募集/東恩納千晴さん/かきうち農園/三重県御浜町
新卒でかきうち農園へ入社。3年目に入ったばかりの東恩納千晴(ひがしおんな ちはる)さん。小学生までを大阪。その後はお父さんの実家がある沖縄で過ごしてきました。進学を機に三重へ。卒業後、御浜(みはま)町に住むことを決めたのち、かきうち農園と出会います。
午後3時。出荷作業を終えた彼女に話を聞きました。
<御浜町へ来るまで>
–東恩納さんは、どうして御浜町へ?
学生が三重県内の地域に入る活動があって。2年生の冬から、あちこち来させてもらったんです。その一つが、御浜町の神木(こうのぎ)地区でした。
「日本の原風景て、こんななんやなぁ」。こういうところを知らずに育ってきたわたしにとって、神木は新鮮ないなかでした。
-どんなところ?
山あいのわりに平地に恵まれている。とにかくよく陽が当たる。気候があたたかくて、人ものんびり。
ちょっと沖縄っぽいんです、時間の流れ方が。似たとこのなつかしさがありつつ、違うことの新鮮さもある。そのバランスが好きです。いいとこですよ。
人口は500人ほど。わりかし子育て世代もいて。Iターンの人たちが、地区内の活動も担っていたり。行事とか夏祭りも活発ですね。
–卒業後はそのまま住もう、と?
愛着も大きかったけれど、決め手は意地でした(笑)。
–意地?
学生のときの活動は「どうしたら神木はもっとよくなるか?」について住民たちと話し、課題を一つひとつ解決していこうとするものでした。
わたしが関わる数年前から行われていた活動なんです。学生が気がねなく言う“正論”も、住民からすると「できるならやってるよ」という話でもあって。
だんだん、地区の人と学生の間に、越えられない壁が生まれていることに気づいた。「学生として関わるうちは、正直なところの話はできないんやな」。くやしくなったんですよ(笑)。
卒業を前に、神木との距離感をずいぶん考えたんです。すっぱりたち切るか、県庁所在地のある津市あたりで就職して、たまに通うか… でも、どっちを選んでも、神木に心は残る。
やっぱり、くやしくて。
どれだけ頭で考えても結論は出ない。
「住んでみたらわかるか」。
そのときの気持ちで決めてしまったんです(笑)。
<生活をはじめて>
-今、1日はどんな感じです?
8時の始業に合わせて、わたしは7時半ぐらいに出社して、夜6時くらいに帰って。お風呂入って、ご飯食べて寝て。ふつうですね(笑)。
そうそう。自分の性格上、いそがしいのは、きらいじゃないんです。都会でせわしなく働くよりは、いなかでせわしなく働いたほうが気は楽かな、と思いました。
-買いものはどうしてますか。
海沿いの国道42号線に出ます。車で10分くらいのところに、スーパーのオークワとか、一通りあるんです。
-大学時代に住んでいた津から見ると、この辺りはだいぶいなかでは?
三重出身の同級生に聞くと、東紀州は“辺境の地”みたいなイメージが強い(笑)。
でも、実は面白いんですよ。もっと魅力が伝わればな!
山奥に、自然の見どころがあるんです。わたしは湯ノ口温泉が好き。友だちが来ると、瀞峡(どろきょう)はかならず連れていきますね。それから、丸山千枚田、熊野本宮大社も!
あとはね、観光マップにも載らない集落でぼーとしたり。
“見どころあふれる辺境の地”にありながら、ふだんの生活は静かなのもいい。
津から2時間、伊勢から1時間で来れるんやけどな。一度足伸ばしてみいや!って思います。
<かきうち農園のこと>
–かきうち農園で働きはじめたきっかけは?
2015年の4月に、神木で家を借りて。みかん関係の仕事がないか、人に聞いて回ったんです。区長さんと元区長さんに教えてもらったのが、かきうち農園でした。
–どうしてみかん関係の仕事に?
御浜町の産業は、やはりみかんだと思うんです。けれども「みかんでは食っていかれん」「子どもにはやらせへん」とよく聞く。子どもを大学へやってる人もいるのに・・・ 「みかん農家は立派な仕事じゃないですか」「みかんで生活立てるって、どんな感じやろ?やってみよか」と思ったんです。
-ここでも、まずはやってみようと。どんな仕事をしているんですか?
みかんの栽培から収穫、出荷、対面販売までを一通りしています。
2月ごろに行うのが剪定(せんてい)です。果樹の成りを調整するため、枝を切ります。7月からは摘果(てきか)。つきはじめた実を間引きます。
あとは消毒ですね。木の状態を見て、防虫と病気を防ぐために最低限行います。夏場は薬剤よけに着るカッパがほんとうに暑くて!
体力的にきついことはあります。たとえば収穫。みかんが20キロつまったコンテナを運びます。御浜町の畑は、和歌山や愛媛に比べると傾斜がなだらかとはいえ、坂道を何十往復もすると「きついなぁ・・・」。
農作業全般にいえることかもしれませんけど、一人でずっとやってると、「はぁ・・・」とむなしくなる瞬間がある(笑)。もう一人いたら、全然違うんですよ!「ぱーっと運んじゃおっか」「次行こか〜」。いい人が来てくれると、いいなぁ。
–もともと、体力はあるほう?
いやいや〜ないもんで(笑)。つけなあかんと思いつつ、今年も夏が来ますね。でもわたしでもいけた、って。いまのとこの感想です。
-畑での作業内容は、毎年同じですよね。1年目と変化はありますか。
見るところが変わってきます。1年目は、作業の流れを覚えるのに必死で。2年目からは、木のコンディションに目が向くようになった。意識して毎日手ぇ入れやる中で「もうちょっと肥料やったらなあかん」とか。毎日見ていると、愛着もさらに湧いてきます。
みかんはね、畑でパッとちぎって食べるのが一番おいしいですよ。天気がいい日の甘夏なんか、もう。1年間が、この実に詰まってるんです。
収穫は年に1回なので、わたしはようやく2回経験したところ。みかんの味も去年と今年では、また違いますし。その年の味ってあるんです。
–自ら販売もするんですよね。
つくって、袋づめして、対面でお客さんに届ける。お客さんの声を生で聞けるのは、わりかし楽しみです。ふだん接客しない分、緊張するのかな。あとからドッと疲れるんですけど(笑)。
–自分が畑に立つから、お客さんに伝えられることもありますか?
むっちゃありますね。「文旦、どうしてこんなにみずみずしいん?」「樹上で完熟したからですよ」。市場に出るものの多くは、完熟前に収穫しているんですね。話を聞くことで、お客さんももっとおいしく感じられるようです。
–3年目に入った今、どんなことを考えていますか?
より稼げるようになりたいです。
–直球ですね。
はい(笑)。対面販売をする中で、「納得したとき、人は気持ちよくお金を払うんだ」って気づいて。
稼げることは、もっとお客さんに満足してもらうこと。お客さんの手元にみかんが届き、箱を開けたとき「わぁ」と思ってもらえる見た目、味。もっと工夫をしていきたいです。
-(自分を振返って)社会人3年目のときは、そんなこと考えていなかった気がします。
自分で気づいたこともありますし、2人の先輩から、学ぶことも大きいです。あと、地域のかんきつの若手農家さんが、月一で勉強会とか飲み会やってるんです。わたしも参加させてもらって、会社では話しきれないことも、色々話して。
-話せる人たちがいるんですね。
はい。みかんの好きな人やったら、大丈夫と思うんです。まずは気軽に問い合わせてみてくださいね。
<募集要項>
株式会社かきうち農園 | |
募集職種 | ファーマー |
雇用形態 | 正社員 |
給与 | 日給月給制170,000円(残業代別途支給) |
福利厚生 | 通勤手当あり |
仕事内容 | ・柑橘の栽培管理を担当します。堆肥や肥料を散布したり、病害虫および病気対策の農薬を散布します。 ・摘果作業や収穫作業など柑橘全般の作業を担当します。 ・加工品などの企画開発や海外展開にも携わってもらいます。 *本人の適性や希望によって、このほかの業務もお任せする可能性があります。 |
勤務地 | 三重県御浜町内 |
勤務時間 | 8:00~17:30(11:00~12:00休憩 10/15:00に15分休憩) |
休日休暇 | 週休制(日曜)年間80日 |
応募資格 | ・みかんが好きな方 ・植物などの栽培が好きで、日々観察ができる方 ・チャレンジ精神旺盛で行動力のある方 |
採用予定人数 | 若干名 |
応募の流れ | まずは下記よりご応募・お問合せください ↓ 書類選考 ↓ 面接 ↓ 採用(試用期間6ヶ月) ・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します ・まずは、一緒にはたらいてみませんか ・入社後は、新入社員教育としてビジネスマナーや安全講習などの講座を受講し、社会人としてのマナーを学びます。その後、先輩社員とともに現場作業を一緒に行います。丁寧に教えますので、農業初心者でも大丈夫です。また、現場作業だけでなく、出荷作業や事務作業も経験して農園全体の仕事を把握してもらいます。 |
従業員数 | 10名(パート7名含む) |
<垣内清明さんの記事はこちら>
(写真と文:大越元)