「地域おこし協力隊×海女」という複業/上田茉利子/鳥羽市石鏡町

2019年11月30日、鳥羽市石鏡町にて「いじかあさいち」がプレオープンしました。



会場となったのは、海まで10歩!

目の前に石鏡(いじか)漁港が広がる旧・造船所前です。かつて船を陸へと引き揚げた船台(せんだい)に、約200人が集まりました。人口約400人の石鏡町がにぎわいを見せます。

おいしいをみんなで囲む朝市



「いじかあさいち」のゲートをくぐって、会場へ。

さっそく振る舞いの「煮味噌」をいただきます。





煮味噌とは、漁師や海女の定番ランチ。その日獲れた旬の食材を、砂糖と味噌で煮込んだものです。

「砂糖をようけ入れてな、石鏡のはちょっと甘め」とは、料理担当の山本美也代さん。





冬の始まりに、みんなで食べる煮味噌。これは感慨深い味わいでした。聞けば住民たちは、2016年から朝市のアイデアを温めてきたそう。「町内外の人が食卓に集い、石鏡町のおいしいご飯を食べながら、人と人がふれあう場をつくりたい」と考えてきました。

海女とふれあえる朝市

2020年のグランドオープンを目指して始まったいじかあさいち。 今回は、11ブースが出店。地元で働く女性のほとんどが海女という石鏡町。海女や漁師たちが店頭に立ちました。

石鏡町で獲れたてののサザエに加え、足が早いことから市場にはほとんど出回らないヤドカリ。市場に流通しない魚の干物。そうした海の幸を、カマドで炙りいただきます。





店頭には、見慣れない魚介類が並ぶからこそ、会話が生まれます。

お客さんが「これ、どうやって食べるんですか?」と質問をする。海女さんが「“アラメ”は肉厚な海藻だから炊いてみて。水で戻して、手でしぼって」。

漁師手づくりの干物を購入したものの、片手にカマドの前で立つお客さんには、地元のおじちゃんから声がかかる。

「皮目から焼いたほうがええな」。

食を通じて海女や漁師と触れ合えるのが、いじかあさいちの特徴です。

海女のまちの地域おこし協力隊

「では、干物名人の間取くんに聞きます。今日の一押しは?」「次は、海女の大先輩である三忠丸のきよゑさん。ホラ貝って生で食べられるんですか?」「こちらはご存知、移住の先輩の大野愛子さん。ひじきご飯おいしそうですね!」。

マイクを持って会場のお店をまわり、出店者を一人一人紹介して回る女性がいました。



2018年に石鏡町へやってきた上田茉利子さんです。

早稲田大学を卒業後、広告代理店を経て、海女になりたいという夢を持ちました。

「地域との関わりを深めながら、海女を目指そう」と、地域おこし協力隊に。

2018年度には石鏡町の人たちと一緒に海女料理教室を開催。企画・運営を通じて生まれた信頼関係が、いじかあさいちへとつながりました。

人も地域も一歩ずつ

打ち合わせの様子。上田さんの隣には、佐藤千裕さん。2019年に地域おこし協力隊として着任し、いじかあさいちではデザインを担当。

「まずは、顔の見える人たちに来てほしかった」と話す上田さん。今回の朝市では、大々的なプレスリリースを行いませんでしたが、Facebookページ「いじかあさいち」の投稿に30件を超えるシェアが起きるなど、SNS上では大にぎわい。

当日の集客にもつながりました。会場には、ウワサを聞いて一家で駆けつけた石鏡町出身者の姿が。また、はるばる東京から訪れた人もいました。

そう、いじかあさいちは、石鏡町に起きた小さな“事件”でした。

最後に、上田さんから。

「来年度のグランドオープンに向けて、今年度に再びプレ朝市を開く予定です」「海女や漁師に興味がある人も、地域おこし協力隊に興味がある方も、ぜひ訪れてくださいね」 。

いじかあさいちの情報はFBページへ

鳥羽市石鏡町では、地域おこし協力隊を募集しています。

関連記事一覧