2017年４月５日。三重県御浜町役場を訪ねると、４日前に地域おこし協力隊に着任したばかりの女性に会いました。

浦本紗也香（さやか）さん、22歳。

新卒で御浜町にやってきた彼女。この日は、役場企画課の林さん案内のもと、御浜町を巡りました。

御浜町では現在、仕事をつくる人を（地域おこし協力隊の制度を活用しつつ）募集しています。「御浜町にはどんな人がいるのか？」「もしも自分が御浜町へ来たら」。参考になればと思います。

前編

 

上市木地区・ウェルカムハウスへ

林）御浜町では、民宿の軒数も減ってきたんですね。そこで、短期滞在できる拠点“ウェルカムハウス”をはじめました。昨年度にはじめたのが、尾呂志地区のウェルカムハウス。ここは、最長一週間滞在できます。

もっと長期で滞在できる拠点をつくりたいと思って。用意したのがこの物件です。上市木地区は、町役場からも５分。国道に出やすいところです。実はこの辺りも人口、減っているんです。

–静かなところですね。

道路からも田んぼを挟んでいますからね。空き家の多くには、屋根からの雨漏りや床の腐り、水廻りの修繕などがつきものですが。内部もほとんど使われていなくて、そのまますぐ住めます。家族でもじゅうぶんに住めるサイズですし。空き家バンクに登録したら、すぐに借り手がつくと思います。

–どんな使いかたが考えられるんですか？

実際に御浜町に住むことを決めた人が、自分の住みたい空き家に出会うまでの仮住まいとしてつかってもらえたら。もちろん、ここが気に入ったら、別のウェルカムハウスを探します。

それから、御浜町は「年中みかんのとれるまち」です。９月から10月にかけては、温州みかんの収穫に人手が必要になる。そうした人向けの滞在施設としてもつかってもらえたら。

–その他にも使いみちがありそう。

協力隊の人に、考えていってほしいところですね。

尾呂志地区・JAの育苗施設

林）ここで、御浜町内の米の苗を育ててるんです。

林）田んぼも見てみましょうか。

林）用水路から、水の流れる音がするでしょう。この音を聞くと、春だなぁという感じがするんです。水は、向こうの山からくるんですよ。

林）水張り、はじまりましたね…。やっぱ…尾呂志はやっぱりいいよなぁ。

–左手に見える旧保育所が活動拠点になるんですよね？

林）そうです。もう少しすると、園庭の桜が咲きますよ。

浦）きのう今日は、事務所で必要になる備品のリストをまとめて、業者さんに注文をかけているんです。

林）これは、あまり大きな声じゃ言えないけどさぁ…　役場内にいると、周りの職員も距離のとり方がまだつかめてなくて。ついつい「○○お願い」とか頼んでしまうと思うんだよね。でも、役場の臨時職員をしに来たわけじゃないじゃない。とはいえあたらしい土地にくると、ついつい受けちゃうと思うんだよ。そこは明確に線引きしないと。2020年の春に「なんのための３年間だったの？」となってはならない。自分の時間に充ててほしい。そういう思いもあって、尾呂志にベースキャンプをつくるんです。

早く移ってほしいなぁ。

南紀グリーンハウスさんへ

林）芝崎さん、こんにちは。

芝）あなたが協力隊？

浦）浦本、と言います。

–芝崎さんはどんな仕事をされてるんです？

芝）エアープランツは、空気中から水分と要素を吸収することで、土がなくても育つ不思議な植物なんです。

芝崎さんは、園芸の商社立上げを経て、実家の都合により生まれ育った尾呂志地区へとUターンした人。南紀グリーンハウスさんは、日本一のエアープランツ生産量を誇り、地区内に雇用も生み出している。

芝）何か困ったことがあったら、栗須（くるす）集落の上林さんを頼ったらいいよ。僕は30のとき帰ってきて、34で起業したんです。当時は徳川家に献上した尾呂志米を活用した米祭りをやってきた仲です。なんでも解決してくれるから（笑）

林)芝崎さん、あのね。浦本さんとも連携する協力隊を追加で募集するんです。チームを組んで、活動してもらいたくて。

芝）へえ。

林）各集落にバラバラに入ってもらうんじゃなく、尾呂志を活動拠点に、ぎゅっと集まってもらおうと思って。

芝）うん。それがいいね。地区には、上林さんや僕のようなのがいる。黒子になって、いざいというときは支えるから。浦本さんたちが、どんどん動いてもらえたらいいよ。

あのー。移住定住の取組みはどこでもやってるでしょう？特化するのも一つだと思ってて。たとえばこのロケーションを活かしてフィルムコミッションに特化する。浦本さん、女優にならない？

移動の車中で

林）桜、咲きはじめたねぇ。今週末かなぁ。

–御浜町内で花見というと、どこになるんです？

林）お花見スポットとしては小さめですが、阿田和（あたわ）のふれあい桜公園や寺田公園かな。桜の木は、集落内にも点在していますよ。あと、周りにはありますよ。お隣紀和町の小森ダムとか。

（後編へ続きます）